【感想】”共同作業”を観察する意味とは。田中功起「共にいることの可能性、その試み」@水戸芸術館

IMG_4999やあやあ、一人旅が好きな鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。仙台から青春18きっぷを使って、水戸芸術館にやってきました。

ここ水戸芸術館で開催されている田中功起の展覧会のテーマは「共にいることの可能性、その試み」 です。

 

国内外で活躍するアーティスト・田中功起の日本初となる大規模な個展。水戸芸術館の現代美術ギャラリーにて2月20日から5月15日まで開催されています。

 

海外居住をきっかけに「人と人との関係性」に興味を抱くようになったという田中功起。2013年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレにて、5名の陶芸家が1つの陶器を作る、5名のピアノ科の学生がひとつのピアノを演奏する、9名の美容師が1人の髪を切るといった、複数の人々が共同で一つの課題に取り組む様子を捉えた映像作品を発表し、国際的に高い評価を受けています。(今回の展覧会でも、陶芸家・ピアノの作品が上映されています。)

あなたはどのような場面でまったく初対面のだれかに心を開くだろうか。
あなたは隣にいるだれかとどのようなとき、共に助け合おうとするだろうか。
あなたは何を根拠にだれかを信頼し、あなたの傷つきやすさを預けようとするだろうか。

田中功起【2015年11月8日のメモ(ステイトメントとして)】

こうした問いに対し、この個展のために制作された新作では「移動/移住の経験をした人」を募り6日間の滞在型ワークショップを実行し、異なる私たちがそのままで共にある可能性を探ります。

一般参加者とファシリテーター(促進者)、撮影チームらが一つ屋根の下に滞在し、朗読、料理、陶芸、社会運動にまつわるワークショップ、ディスカッション、インタビューなどを共に行った6日間の記録を元にした複数の映像が、作家のノートなども添えて展示されています。

 

一時的な共同体において人はどんな感情になってどんな行動を起こすか。そうした誰しもが持つ疑問に対し、真っ向から向き合う田中功起の姿勢に共感。

そんな感じで早速、入場だ!!

 



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「共にいることの可能性、その試み」の感想。

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中に入ると、木製の仕切りによっていくつにも分断された空間が。そのそれぞれに映像が投影されていたり、ワークショップの様子が再現されていたり、作者やファシリテーターのメモが残されていたりします。

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順路はなく、それぞれが想い想いのルートで、ワークショップの様子を追体験していきます。

 

現代美術というと難解というイメージがあるかもしれませんが、ドキュメントやインタビューの集積なので、誰が見ても理解可能。映像は淡々と進み何かのドキュメント番組を観ているようで、面白かったです。余計な演出が一切ないことや、表情やしぐさなどを巧みにとらえたカメラワークなどから、ワークショップの生々しさが伝わってくるようでした。

 

ただし、全編は230分と云うことで、一度で全部を観ることは難しいです。今回に限り、一枚の入場券で3度入館が可能です。更に、ごく一部を除いて写真の撮影もOKとなっています。

さすがに230分間見続けなくてはならないということはないのですが、それでも全体を把握するには、相当な時間を要します。

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ワークショップ前半では、参加者が記憶に残る料理を語ります。一見なごやかな雰囲気に見えて、互いの表情、仕草から、その後に訪れる不和を予言します。

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続くチームに分かれ陶芸を作るシーン。チームの中で誰がイニシアティブをとって進めていくのか、完全分業制なのか、少しずつお互いがやりにくさを感じながら進む作業。

 

6日間のワークショップの中でお互いの差異は表立たないものの、最終日のディスカッションで、国会前のデモなどが話題になると不和が露出、言葉がぶつかり合うことになります。

 

ようやく現れた互いの本音。ここから一歩深い議論になるかと思われた時に、帰りのバスの時間が来てしまう。唐突なラスト。視聴者も含め、お互いのわだかまりを抱えたまま物語は終了します。

 

…なんていうんだろう、日本人だからなのか、お互い主張し合うシーンは少なく、けん制し合いながら一つのものを作り上げていくような日本人的距離感を感じる映像です。もう少しキャラが立っている人同士であれば、もう少し分かりやすくぶつかり合ったのかもしれません。

 

しかし、映像には不完全燃焼な部分はありましたが、絶えず思考を凝らしながら、冷静な問いを続ける田中功起の姿勢にとても共感しました。

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最後には今回の参加者に対してインタビューがあるのですが、内面に抱えていた感情や思いと、第三者から見た現実のふるまいは全く異なっており、今回の作品に参加することについても相当の覚悟を持って決断されたということで、改めてこのプロジェクトがどういう現場だったのかということについて考えさせられました。実は、なにげない共同生活のように見えて実はかなり緊張感のある現場だったのではないかと。

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また、最後の最後で明かされる声をかけた参加者のうち2名が欠席という事実。その欠席した理由についてもそれぞれが信念を持ってこの作品への出演を断念したことを知り、こういう緊張感の中で強度のある作品を作るという難しさを感じました。

 

 

会場には先に述べた第55回ヴェネツィア・ビエンナーレにて展示された、「5名の陶芸家が1つの陶器を作る」、「5名のピアノ科の学生がひとつのピアノを演奏する」といった、複数の人々が共同で一つの課題に取り組む様子を捉えた映像作品も並列されて上映されています。

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参加者それぞれが私はこうしたい、いや私はこうだ。と意見をぶつけ合いながら一つにまとめていくような緊張感のある作業。たくさんのパターンを試行するうちに徐々におぼろげな形が見えてくる。特にピアノの演奏はお互いの距離感がそのまま音楽として表れており、とてもスリリングなものでした。

結果として、素晴らしい作品が出来上がったとしても、意外と枠に収まった普通の作品になったとしても、どうしようもない駄作が完成したとしても、プロセス自体がとてもエキサイティングな内容になっています。

「最終的なアウトプットがしっかりしている」、「メンバーの主張がしっかりしている」というこの2点がはっきりしていることが、これらの作品に緊張感を生んでいるのだと感じました。

こちらの作品が映像として圧倒的に分かりやすく、本編の些細な距離感を感じ取る力が薄れてしまったところがあった気がします。

 

最後に!!

人と人の関係した時に生まれる、微妙な不和やその調整に向かうふるまい。田中功起はそこをすくい取るのが本当に上手だなと感動してしまいました。

日頃、人間関係とはなにかについて思いを巡らせたことがある人なら必ずどこかで共感するはず。不安定な状態がもつ特有の緊張感になにか日常生活への気づきがあるかもしれませんよ。

 

展覧会の概要は以下の通りです。

住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8

電話:029 227 8111

会期:2月20日〜5月15日

開館時間:9時30分〜18時

定休日:月曜休(3月21日は開館、翌日休)

入場料:800円(1枚の入場券で会期中3回まで入場可)。

公式サイトより)


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鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
色々なバージョンの共同生活をドキュメントとして見てみたいなと思いました。

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