【感想】『サンシャワー 東南アジアの現代美術展②』アートを通して感じるASEAN諸国の叫び〜国立新美術館編〜

やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。

2017年7月5日〜10月23日より国立新美術館&森美術館の2館で同時開催されている『サンシャワー 東南アジアの現代美術展』に行ってきました。

あまりのボリュームなので2編に分けてお届けしております。前回森美術館編はこちら。

【感想】もはや芸術祭!『サンシャワー 東南アジアの現代美術展』のエネルギーが凄まじい。〜森美術館編〜

2017.07.17

今回は国立新美術館編をお届けします。

森美術館も充実の内容でしたが、国立新美術館も負けず劣らず、体験型アートから東南アジアの伝統や歴史に触れられるアートまでたくさん詰まっていました!

インタラクティブな作品や大型展示は、国立新美術館に多かった印象です。とにかく各国のアーティストがそれぞれに明確でパワフルな主張を持っていて、色んな方法で訴えかけてきます。



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『サンシャワー展』の様子をレポート@森美術館

展覧会は2館合わせて、9つのセクションで構成されており、国立新美術館では、以下の5セクションの展示がなされています。

  • 「うつろう世界」
  • 「情熱と革命」
  • 「アーカイブ」
  • 「さまざまなアイデンティティー」
  • 「日々の生活」

会場はほとんどの作品が撮影可能です。撮影禁止な作品にはマークが付いています。

以下、気になった作品を抜粋してご紹介します。

国立新美術館の展示内容

国立新美術館へ向かいます。1階では『ジャコメッティ展』が開催中ですが、サンシャワー展は2階でやっています。

イー・イラン 《うつろう世界》(「偉人」シリーズより) 2010年

東南アジアが経てきた植民地の歴史を掘り起こすシリーズ。海に囲まれた東南アジアの小さな島々には多くの海賊がいましたが、それは外国から見れば「海賊」ですが、現地人からすれば外敵から交易圏を守る「偉人」でもあったということです。

立場が違えば世界の見え方も大きく異なります。島々では大陸とは違うそれぞれの文化が醸成された一方で、植民地支配によって大きな変化を強いられた国もあります。大きな空間や時間のダイナミズムを一枚の絵から感じました。

ウォン・ホイチョン 《移民の皮膚/先住民の皮膚》1998年

輸入種と在来種の植物の皮を用いて人間の顔を表現した作品。マレーシアが多くの人種が入り混じった多民族国家であることを鮮やかに印象付けられます。

見た目の美しさと知性が組み合わさった素敵な作品です。

アグス・スワゲ《サイチョウと宣教師》1996年

ボルネオ島の先住部族の守護神サイチョウが大きく描かれています。よく見るとサイチョウの体には、ラテン語で文字が書かれ、欧米系の宣教師に何かを教わっているようです。

土着の文化と新しい文化が交錯している様子が皮肉として描かれています。

FX ハルソノ 《声なき声》 1993-94年

パネルの手前には指文字に対応するアルファベットが刻まれたスタンプが置かれ、鑑賞者は自由に紙に押すことができます。この指は何を訴えているのか、実際にスタンプを押して考えてみてください。

ホー・ツーニェン《2匹または3匹のトラ》2015年

トラは東南アジアで神のような存在として崇められてきた存在ですが、英国は19世紀、植民地政策の一環としてマレートラの虐殺を敢行しました。虎と人間の共生関係を破壊した西洋人。

虎の怒りや人間との対立を映像化することを通して、東南アジアと西洋の関係を浮かび上がらせているようです。

ムルヨノとセラム《良心のためのアート:244×122の学校》2017年

ムルヨノはインドネシアの島々で村人たちとともに一般教養の学習活動を続けているアーティスト、セラムはジャカルタを中心に教育に焦点を当てた活動をしています。

今回はこの二人がインドネシア各地の学校で行ったワークショップの様子が展示されています。教育とアートはとても親和性が高く、日本でも多くのワークショップが行われていますが、子供達の描く絵画はどの場所でもチャーミングで温かく、人の心を打つものだと感じます。

リー・ウェン《奇妙な果実》2003年

展覧会のポスターにも掲載されている作品。全身を真っ黄色に塗り、赤いバルーンを身にまとって各地でパフォーマンスする様子が展示されています。

顔も見えない黄色い足の物体が日常の風景に存在する。どう考えても奇抜な行為ですが、日常との対比的なシュールさに思わずクスッと笑ってしまいます。このナンセンスさが何を示しているのか、自分でもやって体験してみたくなります。

ムラティ・スルヨダルモ《アムネシア》2016年

黒い服をミシンで縫い、その間、延々と「アイム・ソーリー」とつぶやきながら、縫った服の回数だけ壁面にチェックを入れるというパフォーマンス。

個人的な心情と国民の記憶・感情が入り混じった歪で整理できないモヤモヤ感がこのパフォーマンスに凝縮されているようです。

ミン・ウォン《来年》2016年

既存の映画を引用し、そこに新しいレイヤーを付加する手法で制作された映像作品。今作では欧米人が出演する映画にウォンが様々なキャラクターに扮し、登場人物を入れ替えます。

アジア系の人間であるウォンが性別や人種にとらわれず、多くの欧米人に入れ替わることでユーモラスで時にハッとするような解釈を与えてくれます。

スヴァーイ・ケーン《お菓子を食べながら籐を編む祖父》1997年

カンボジアの現代アートの祖父と呼ばれるケーン氏の絵画作品。このおじさんの穏やかな表情やどこか気楽に生きている雰囲気にとても癒やされます。

他の作品も含めて、彼の絵画からは当時のカンボジアの様子が瑞々しく魅力的に伝わってきて、カンボジアで生きてきたアーティストだからこその作品だと感じます。

スラシー・クソンウォン《黄金の亡霊(現実に呼ばれて、私は目覚めた)》2017年

本展覧会でも一位二位を争う大型の体験型作品です。壁に囲まれたスペースに5トンもの糸が敷き詰めてあります。

この糸の中には9本の金のネックレスが紛れ込ませてあり、これを見つけた鑑賞者は申告して持ち帰ることができるのだそうです。こうした布を使って色彩の華やかさと物量で圧倒するような展示は多くありますが、実際に中に入れてしかも宝探しになっているというのはとても面白いですね。

ちなみに実際入ってみましたが、糸の絡まり方が凄まじく、底も深いため全く見つかる気がしませんでした。。。

アングン・プリアンボド《必需品の店》2017年

必需品の店というタイトルとは裏腹に、売っている商品に価値があるとは思えず、隣り合っている商品に全く関連性のない不思議なお店です。来場者はお店に入って中で売られているものを実際に買うことができます。

何でもインターネットを通じて手に入ってしまうこの時代において、店に行くこと、モノを買うことの価値や自分にとって本当に必要なモノは何かについて考えさせられる展示です。

展覧会の感想

森美術館との比較で感想を述べるとすれば、森美術館は「東南アジアの歴史や土着性」に着目した作品が多かったのに対して、国立新美術館の展示は「東南アジアの多様性や変化」に着目した作品が多かったように思います。

現代アートには結構トレンドがあって、グループ展においてキュレーターはその流れに沿った作品ばかり集める傾向にありますが、この展覧会は(多少のディレクションはあるけれど)本当に多様です。とにかくどんなジャンルの作品を並列的に並べています。アーティストの出身、作品のコンセプト、テーマ、表現方法、なんでもありな内容です。

でも、どの作品を見てもその根底には東南アジアの風土、歴史、社会が透けて見えます。

それはなぜかを考えた時に、展示作品に共通点があるとすれば「アートに対する切実さ」なんじゃないかと思います。

例えば、戦争や植民地化への批判、海外資本流入への不安、失われる文化への危惧など、どの作品にも社会的メッセージがこれでもかと込められています。

日本の現代アート作品にはそういった強い社会性、メッセージ性を持つ作品はかなり限られていて、もっと私的でポエティックな作品も多いのですが、今回のサンシャワー展にはそれがないのですね。

胸が熱くなる一方で、ポエム慣れしている日本人としてはちょっと息苦しいかなと感じる場面も正直ありました。。

そういう意味で、先日まで森美術館で開催されていた「N・S・ハルシャ展」はインドの抱える社会情勢と作家の持つポエティックな表現が見事に合致して素晴らしいバランス感覚だったのだなと改めて思いました。

【感想】『N・S・ハルシャ展@森美術館』矛盾した世界をチャーミングに捉え直す優しいまなざし。

2017.02.08

東南アジア諸国のアーティストが抱える切実さを、作家自身の持つポエティックでユーモラスな表現を踏まえて表現できたらもっと切れ味鋭いアート作品になるのかもしれません。その観点からすれば、リー・ウェン《奇妙な果実》はとても鮮やかな作品でした。

最後に!!

以上、新国立美術館会場の様子をお伝えしました。

感想ではなにやら偉そうなこと語ってしまいましたが、全体を通してアーティストたちの想いがバシバシ伝わって来る素敵な展覧会でした。

ご参考まで、森美術館と新国立美術館、どちらへ先にいこうかなとお考えの方は、新国立美術館の方が展示としての充実度は高かったかなと思います。

その上で気に入ったのであればどちらの会場も見ていただきたいです。東南アジアの雰囲気を感じられる場所ってなかなかないと思いますので、この夏、サンシャワー展、かなりオススメです。

名称:ASEAN設立50周年記念
「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」
会期:2017年7月5日〜10月23日

森美術館会場
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
開館時間:10:00~22:00(火〜17:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休

国立新美術館会場
住所:東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10:00~18:00(金土〜21:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火

観覧料:2館共通 一般 1800円 / 大学生 800円
単館 一般 1000円 / 大学生 500円
問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:http://sunshower2017.jp/

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鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
暑い時ほどアジアンな雰囲気に浸りたいですよね!!

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