やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。
友人の結婚式出席のため、東京に行く用事が出来たので、仙台から茨城で途中下車して「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」を観てきました。
今回が初開催となる茨城県の県北エリアでの芸術祭。既に有名な新潟県の「大地の芸術祭」や瀬戸内海の「瀬戸内トリエンナーレ」のように東京からそれなりの距離がある芸術祭に比べ、茨城県は東京から1時間弱で行ける好立地。
「週末は茨城にアート鑑賞にでも行ってみようかな!」みたいな秋のお手軽小旅行の需要があると思われます。
2016年10月17日(月)付の茨城新聞によれば、
県北6市町で開催中の国際アートフェスティバル「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」は17日、開幕から1カ月を迎える。各会場は週末を中心に多くの人でにぎわい、来場者数は目標の30万人を超えるペースで推移。展示施設や地元商店などの関係者は芸術祭を契機とした地域振興への期待を膨らませる。ただ、県内からの来場者が大半のため、飲食や宿泊などに伴う経済効果はまだ見通せていない。11月20日の閉幕まで残り1カ月余り。
とのこと。ふむふむ、なるほど。
9/17の開幕から一か月。茨城県北芸術祭は当初の予想以上の盛り上がりを見せているようだ!!
実際に行ってみて、かなりの予算と時間をかけて、周到に準備された芸術祭であることがひしひしと伝わってきました。これは一見の価値あり!!芸術の秋は、茨城県北に行くしかない!!
今回はそんなハイクオリティの茨城県北芸術祭について感想をメモしておこうと思います!
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茨城県北芸術祭ってなに??

今回が初開催となる「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」。会期は9/17〜11/20です。
総合ディレクターは森美術館館長の南条史生氏。テーマは「海か?山か?芸術か?」
茨城県の県北地域は、かつて岡倉天心や横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦海岸や、クリストのアンブレラ・プロジェクトで世界の注目を集めた里山など、海にも山にも多くの文化資源を有しています。
そうした知る人ぞ知る観光資源に対して、現代アート作品を通じて新たにスポットを当てるこの芸術祭はとても意義深いものがあると感じます。
この芸術祭の特徴はなんといってもその規模感!
テーマのとおり、作品は主に「山」と「海」の地域に分けられます。広大な面積の県北6市町村に作品が点在しており、大きく4つにわかれたエリアのうち1日にまわれるのは1〜2エリアと言われています。1日ではどんなに頑張っても全部回りきれません。
大体の作品の展示時間が9:00~17:00なので、この時間で最大限の作品を巡るべく、今回私は“山側”のアート作品を中心に巡ることにしました。
私の廻ったルートは以下のとおり。
- 日立駅周辺(8:00~8:30)
- 水戸駅出発(9:30)
- 石沢地区空き店舗(10:15~10:35)
- 旧美和中学校(11:10~12:10)
- 旧家和楽青少年の家(12:30~13:00)
- 常陸大子駅前商店街(13:20~14:20)
- 旧上岡小学校(14:40~15:20)
- 袋田の滝(15:30~16:25)
- 道の駅 常陸大宮 かわプラザ(17:15~17:45)
- 水戸駅到着(18:30)
2.~10.までは近畿日本ツーリストさんがやっている公式ダイジェストツアーを利用しました。
水戸駅を起点に、常陸大宮から常陸大子へと向かう、その名も「じっくり山コース」。
落合陽一等の作品が展示される旧美和中学校、旧家和楽青少年の家、ジョン・ヘリョンの作品を楽しめる袋田の滝などをめぐります。
ちなみに「きらめき海コース」は今をときめくチームラボの作品なんかがありますが、それはまた別の機会に行きたい!
当日の様子をレポート!!
さて、それでは当日の様子を気になった作品とともにレポートしたいと思います。
8:30:日立駅
当日の朝に日立駅到着。バスツアーの出発場所は水戸駅ですが、やっぱり日立駅も見ておかないと。
ということで、早速日立駅周辺エリアを散策。

日立駅は、日立市出身の世界的建築家、妹島和世さんがデザイン監修したガラスの駅舎。この駅舎を覆い尽くすのが、全長300メートルの虹色のカッティングシートを用いたダニエル・ビュレンの作品。
ダニエル・ビュレンといえば、あのフランク・O・ゲーリーのルイヴィトン財団の建物を虹色に変えたことで有名なアーティストですね。

うん、かっこよい。普段の通行者も嬉しくなっちゃいますね。

日立駅には村上史明による「風景幻灯機」が展示されています。

望遠鏡型の作品を覗けば、そこには日立市の美しい海が広がっています。

シビックセンターの近くにはノアのバス。こちらはまだ開いておりませんでしたが、ポエティックな雰囲気が伝わってきます。
9:30:水戸駅出発
水戸駅のビックカメラ前に添乗員さんが立っていました、パスポートを受け取っていざ中型バスに乗り込みます。

中型バスがほぼほぼ満席になるほどの大盛況ぶりです。
バスには添乗員さんがいて、場所に応じて様々な豆知識を披露していただけます。
バス出発後、添乗員さんの挨拶も早々に「CDを再生しまーす」との声。やくしまるえつこによるナレーションが流れます。その後は、この芸術祭の公式テーマソング「わたしは人類」がフルで流れました。
相変わらずのウィスパーボイス。老齢のご夫婦が多かったので、ちゃんとついてこられているか若干心配。旅気分が高まります。
10:15:石沢地区空き店舗
最初に訪れるのは、石沢地区空き店舗。

内海聖史の「moon satellite」。天窓から光が差し込み、きらきらと光る巨大絵画。その大きさにびっくり。ここは、かつて衣料品店だったそう。夜は黄色にライトアップされて月面感がより一層強調されます。

レ=トゥア・ティエンの「森の記憶」では、光と影が織りなす樹木の形がミステリアス。

ミヒャエル・ボイトラーの「ジョイ・センターの客」。ゲームセンターとして利用されていたノスタルジックな空間を舞台に静かに回転するのは、障子の技術と取り入れた大規模な彫刻。
手動で動かせるとのことで、あんまり動かなかったり、すごい勢いで回ったり。高速回転すると目が回ります。作品の制作工程がそのまま現場に展示されており、制作の軌跡そのものもアートのひとつとなっています。
こういうロードサイド店舗が会場となって作品が展示されているのは初めて見たかもしれない。
11:10:旧美和中学校
続いては2015年3月に廃校となった旧美和中学校へ。

各教室に趣向のこらされた展示があり、まるで文化祭のよう。
落合陽一の「モナドロジー」が長いメンテナンス期間を経て、この日から初めてスタートしておりました。
シャボン玉が細かく点滅する点光に照らされて、巨大な線香花火を見ているかのよう。とても繊細な展示。

同じく落合陽一の「コロイドディスプレイ」はほんと不思議!こんな装置が6つほど並んでいます。

装置は数十秒の間隔で動き、シャボン玉の膜みたいなところに光が照射され、蝶が浮かび上がります。カタログに載っているようには蝶々はあまりきれいに撮影できませんでした。

落合陽一の3つ目の作品「幽体の囁き」は校庭に出て校庭にある椅子に座ると、クラスが賑わう声が聞こえて来るというまるで幽体離脱したかのような体験ができます。自分にだけ音が聞こえているようでなんだかちょっと怖い。
最先端の科学技術とアートの融合によってリアルとヴァーチャルが重ねられ、はかなくも不思議な世界が楽しめます。

日立駅にあった村上史明の「風景幻灯機」がこちらにもあります。

写真が見えにくくて申し訳ないですが、映像もしっかり山バージョン。
他にも、Sound of TapBoard、津田翔平、CALAR.ink、鈴木浩之+大木真人、イザベル・デジュー、magma、山本美希などの作品が、かつての生徒たちの学校生活の残り香が感じられる空間に所狭しと展示されています。

ここでバス車中にてお弁当。途中レストランによらずに効率よく会場を回れるところもバスツアーの魅力。
12:30:旧家和楽青少年の家
旧家和楽青少年の家はもともと、青少年活動で体験学習、スポーツ、宿泊等を行ってきた施設です。

会場内に大きく膨らむワン・テユ「No.85」は、もはや異空間。バルーンの薄い膜が張り付き半透明にうっすらと見える建物の構造がなんとも美しい。幻想的。
バルーン内では子供達がはしゃいでおり、バルーンに潜り込むとどこにいるのかわからないので、何度がスネを頭突きされました。。笑

体育館ではザドック・ベン=デイヴィッドの「ブラックフィールド」が床一面に広がっていました。約27,000本もの繊細な金属製の草花の切り抜きで構成された風景は、これだけでも感動なのですが、裏に回ってみるとさらなる感動が!!

モノクロームの草花を眺めながら裏を回ると、鮮やかな草花が現れます。小さな女の子からひげを蓄えたおじいちゃんまで全員が「かわいい!きれい!」とうっとり顏。

地域のボランティアと作り上げた美しい風景。これは感動的!よくもまあこんな大作を作りましたね!圧巻です!
13:30:常陸大子駅前商店街
その後、バスは常陸大子駅前商店街へ。大子は和漆の街。

地域の人々の暮らしと賑わいを支えてきたこの商店街の空き店舗や通りも多くのアート作品で彩られています。

seccaの「japan?」は 3Dプリントされた彫刻が漆により彩られています。

一番気になったのは、干渉する浮遊体の作品。シャボン玉が上から降ってきたかと思うと、器の中でピタッと静止します。不思議。テクノロジーの賜物。
他にも木下真理子や宮原克人、エレナ・トゥタッチコワ、木本圭子、BCL、ソンミン・アン、東京藝術大学の作品がいたるところに展示されています。

超レトロな街並みは散歩しているだけでも味わい深いですよ!!
14:40:旧上岡小学校
次に向かうのは、2001年に廃校になった旧上岡小学校。

なんと味わいのある学校でしょうか。窓ガラスや学校設備など、かつての時代の雰囲気をそのまま味わえる場所。これだけでも十分な存在感。
現在は映像作品などのロケ地として利用されるほか、地域住民の陶芸や絵画教室等にも活用されているそうです。「おひさま」「花子とアン」「ガールズ&パンツァー劇場版」の舞台としても使用されているということで、ポスターが展示されていました。

歴代の校長の肖像や児童の作品などが飾られた講堂に、漆黒の液体による静謐な世界を生み出す田中信太郎の作品が素敵。

Compositの「ファントム」。ここで流される上岡小学校の校歌は新たにOBによって取り直されたものなんだとか。

廃校というセンチメンタルな空間ならではのアートが楽しめる場所です。
15:30:袋田の滝
大子町の名物、袋田の滝へ向かいます。日本三名瀑のひとつで、大岩壁を四段に流れることから、別名「四度の滝」とも呼ばれるそうです。恋人の聖地というアピールを盛んにしていましたね。滝の流れ方が一部ハートマークに見える部分があるんだとか。

滝に続く長いトンネルの中にあるのは、ジョン・へリョンの「連鎖的可能性―袋田の滝」が展示されています。水の流れをモチーフにした大胆なうねりがゆるやかに光り、色が変化していきます。トンネル内に聞こえる滝の音と作品の光が相まった、不気味な迫力。「あれ、このトンネルにこんな灯り有ったかな?」アート目的ではない地元の観光客には少しギョッとする作品だったかもしれませんね。

その後トンネルを抜けて突如現れたのは、滝の壁!間近に流れる大迫力の滝!うおー!でかい!!!

奥に進んでエレベーターに乗ると、滝の全景が拝める展望台に着きます。自然のダイナミズムと、アートの調和が心地よい。紅葉のシーズンはかなり混みそうな予感がします。
17:15:道の駅 常陸大宮 かわプラザ
最後に訪れたのは、国道118号沿いに位置する道の駅常陸大宮かわプラザ。

平成28年3月25日にオープンしたばかりの道の駅。

道の駅の展望デッキの一角に登場した塩谷良太の冬期の彫刻群は、丸みを帯びた川底の石のように、サイズも色も質感も様々。可愛らしい彫刻で、触れることもOK!子供達がこぞって遊んでおりました。
道の駅で茨城名物のシャモつくねを食べようとしたらなんと売り切れ!!ちょっとがっかり。。。
18:30:水戸駅
ここまで9時間の長いツアーが終了!
いやあ、充実の内容で満足満足。
水戸駅でご飯を食べて、特急ひたちで東京に向かいます。
これでまだ半分も作品を見ていないというのだから、底知れぬ大規模な芸術祭です。。。
最後に!!
以上、山コースについてご紹介しました!!
ちょっとした旅気分で行ったのですが、想像以上に気合の入った作品群に完全に意表を突かれました。
こういう地方で開催される芸術祭の魅力は、作品自体にその土地ならではの場所性が活かされていることですよね。私にとって茨城県北は全くの未知の場所でしたが、こうしたアート作品が存在することによって、茨城県をじっくりと掘り下げて体感することができました。
どの作品が会期後も残されるのかは不明ですが、スクラップアンドビルドではなく、恒久展示の作品が増えるとこれからも観光資源として活躍してくれるんじゃないかなと思いました。
まだまだ見たい作品はありましたが、さすが公式ツアー、バランスよく多くの作品を見ることが出来て、大満足!!個人的な一番のオススメは「旧家和楽青少年の家」ですね。
車持ってないからこういう芸術祭はちょっとなあと思っている方も、是非バスツアーを利用して、週末アート旅行を実現してみてはいかがでしょうか!!絶対楽しいよ!!
![]() KENPOKU ART 茨城県北芸術祭2016 公式ガイドブック [ 南條史生 ] |
ダイジェストツアーについて
[運行]2016年9月17日(土)~11月20日(日)の土日祝日に運行
[最小催行人員]1名(定員40名)
[概要]各コース共通
・全行程添乗員が同行します
・昼食(又はお弁当)がつきます(料金に含まれます)
・途中下車する(行程上の展示会場に限る)ことは可能です。事前にお申し出ください。
[参加料金]
・大人 5,000円 パスポート・昼食付き 4,000円 昼食付き
・中学生以下 4,000円 昼食付き
・未就学児 無料 (座席,昼食のご用意はございません)
[お申込み]インターネット,お電話にて申込み
近畿日本ツーリスト水戸支店 TEL:029-225-1015
(受付時間 月曜~金曜 9:30~17:30)
URL: http://tabihatsu.jp/kenpoku-art-2016/