【感想】『N・S・ハルシャ展@森美術館』矛盾した世界をチャーミングに捉え直す優しいまなざし。

やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。

2017年2月4日から6月11日まで六本木の森美術館にて開催中の「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」を観に行ってきました。

森美術館はテーマに沿ってオムニバス形式に作品を集めた企画展と、アーティスト個人にスポットを当てた企画展がありますが、今回は後者の企画展であり、N・S・ハルシャ(N.S.Harsha)の日本初の大規模個展となります。不勉強なもので今回の展覧会で初めて知った作家さんです。

率直な感想は、見応えがあってとてもよかった!

背景に奥深いインド文化を感じながら、作品の印象は極めて現代的でポップ。N・S・ハルシャの優しさと慈しみにあふれた柔らかい雰囲気にあふれた展覧会で、日本人の感性とも非常にマッチしているのではないかと思います。

今回は、そんな「N・S・ハルシャ展」の様子や感想をメモしておこうと思います。



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N・S・ハルシャについて

N・S・ハルシャは、南インドの古都マイソールを拠点に制作を行う、インド現代美術界を代表するアーティストの1人です。世界各地の国際展にも数多く参加し、日本にも2011年横浜トリエンナーレにも出展しています。

彼の作品の特徴は、宗教画のような平面的、反復を多用する古典的表現技法を用いて、現代の社会状況をユーモラスかつシニカルに描きあげるところ。

本展覧会では、彼が美術学校を卒業後、自分の画風を模索していた時代の作品から、「反復」というテーマに辿り着き、その後の作品展開に至るまで、新作含む約75点の作品を通して、アーティストの約20年にわたる実践が一望することが可能です。

また、彼のコレクションであるインド漫画や、インタビュービデオ、マイスールの人々の生活を写した写真や映像、毎日マイスールから届くという現地の新聞などを通して、彼の作品の軸となっているインド文化の歴史について、深く知ることが出来ます。

展覧会の様子

私は平日に訪問しました。森アーツセンターギャラリーで開催中の「マリー・アントワネット展」は2時間待ちでしたが、N・Sハルシャ展は待ち時間ほぼゼロ。森アーツセンターの展覧会はいつも大盛況ですねえ。

本展覧会は撮影可能でSNSにアップすることもできます。非常に空いていましたので、ゆっくり鑑賞した後、気になった写真を撮影することも可能です。

音声案内は無料でレンタル可能なので是非観覧のお供にどうぞ。音声ガイドナビゲーターはYMOの細野晴臣。音声と世界観が不思議とマッチしていてステキ。

以下、気になった作品をご紹介します。

(※掲載している写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止:日本」ライセンスでライセンスされています。)

《1,000の手と空(くう)》1995年

入口はN・S・ハルシャの初期の作品が多く展示されています。

《私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る》1999-2001年

「様々な人物を繰り返し描く」というハルシャの作風の原点とも呼ぶべき作品。出産から死まで、人は移動し、食べ、眠ります。ひとりひとりが同じことをしているようで、誰一人同じではありません。

人々の”生”についての優しく暖かいまなざしが作品を通して伝わってくるかのようです。

《「チャーミングな国家」シリーズ》2006年

《宇宙孤児たちの詩学》(「チャーミングな国家」シリーズより)2006年

《彼らが私の空腹をどうにかしてくれるだろう》(「チャーミングな国家」シリーズより)2006年

《ママ、ぼくの凧はまだ飛んでいる》(「チャーミングな国家」シリーズより)2006年

こうした手前と奥で別のシーンを示す構図で繰り返されるこのシリーズを通して、インド国家の抱える社会的矛盾やインド的宗教観について問いかけられます。

《ここに演説をしに来て》2008年

全6枚のパネルに2,000人以上の人物が描かれています。

「普通の人」、「普通ではない人」全員が同じプラスチックの椅子に座っています。

バッドマンとスーパーマンが座っていたり、

真ん中には十面相、左上には村上隆のDOB君らしきキャラクターも。

音声案内で「ゾウを探してみて」とあったので、探してみました。何匹かいるみたい。

展示室中央部には、ハルシャの拠点とするマイスールの雰囲気や、インド的世界観の解説がなされています。

《空を見つめる人びと》2010年

2010 年のリヴァプールビエンナーレのために製作されたインスタレーション。

この群衆とともに空を見上げると、自分もこの人々の一部となったかのようです。

《ネイションズ(国家)》2007年/2017年

何段にも積まれた足踏み式ミシン。その上には193カ国の国旗が置かれています。そしてそのミシン同士は色とりどりの糸が絡み合っています。

多言語、多宗教、多文化の国インド、「国家」の意味自体を問い直す必要をハルシャは考えているのかもしれません。

《罪なき市民を探せ》2009年

《誓い》2003年

絵の下に描かれている「口いっぱいのお祈り、カバンいっぱいの夢。それがあれば私たちは行ったことのない空間に行くことができるでしょう」というメッセージが心に響きました。

《未来》2007年/2017年

子供たちそれぞれの未来の夢を描いたシャツ。ハルシャはワークショップを通して子供たちと交流するプロジェクトに盛んに取り組んでいます。この作品は本展覧会のために六本木の子供達と製作しました。

《ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ》2013年

《捜し求める者たちの楽園》2013年

展覧会の感想

絵画を中心としながらも、床絵、壁画、彫刻やインスタレーションまで多様なメディアを使用した彼の展示は、どの作品においても刺激的でした。

見た目はポップで惹きこまれるけれども、じっくり見ると立ち現れてくる違和感。作品の背景に潜む、世界の不条理やN・S・ハルシャの持つ独自の宗教観が、一辺倒ならぬ深みのある作品につながっているのでしょう。

インドについては、旅行したこともなく、人づての話を聞いただけの漠然としたイメージしか持ち合わせていなかったのですが、ローカルとグローバル、伝統文化とテクノロジー、自然と人工物、食糧難、貧困などの経済格差といった多くの問題にインドが巻き込まれている状況が切実に伝わってきました。

今回の展覧会ではマイスールの様子やインドという国自体の解説も多く、ハルシャの背景が知れてよかったですが、現代インドの状況について、実体験としてより深く知っていればこうした作品もよりシニカルなものに感じられたのかもしれません。

もう一つ、彼の作品の通底している「生」への暖かいまなざしが印象的でした。

移動する、食べる、寝るといった人間ひとりひとりが当たり前に行うこと、しかしその行動の仕方は誰一人として同じでないこと、その人生の繰り返しと差異を“チャーミングなもの”として受け入れ、「反復」という形式を用いてコミカルに表現されているところにハルシャの業の深さを感じました。

子供を巻き込んだワークショップを行うことも多いというN・S・ハルシャ。「未来」について子供と考えることがなにより重要と考えているという話も印象に残っています。

最後に!!

以上、「N・S・ハルシャ展」の様子をご紹介しました。

N・S・ハルシャの魅力が凝縮された本展覧会。ウォーリーを探せ!のようにずーっと見ていても楽しめる作品の繊細さと多様性。何度でも観に行きたい展覧会です。

日本でも人気が出るのに違いなさそう。この展覧会がストレスなく鑑賞できるなんて、空いている今がチャンス!

会社終わりに、週末に、是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。

【開催概要】
名称:N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅
会期:2017年2月4日(土)~6月11日(日)
住所:東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間:10:00〜22:00、火10:00〜17:00※いずれも入館時間は閉館時間の30分前まで
休肝日:会期中無休
入館料:一般1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳〜中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円
公式サイト:http://www.mori.art.museum/contents/n_s_harsha/

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鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
絵画はテキスタイルのようで純粋に美しかったです。

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2 件のコメント

  • はじめまして
    私は、久しぶりに美術館に行ったこともあり、難しいなあとちんぷんかんぷんに感じました
    でも、能ある鷹hさんのブログを拝見して、だんだんしみこむようにわかってきた気がします
    ありがとうございました

    • >テンちゃん様
      コメントありがとうございます!
      ハルシャ展、素敵な展覧会でしたよね。
      たまに展覧会の感想を書いてますので、
      またご覧になってみて下さい^ ^

      テンちゃんさんのブログの漫画
      味があってステキです…!

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