やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。
六本木の21_21 DESIGN SIGHTで10 月14 日から開催されている「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」を見に行ってきました。
「デザインの解剖」は、21_21DESIGN SIGHTのディレクターを務めるグラフィックデザイナーの佐藤卓さんが2001年より取り組んでいるプロジェクトのひとつ。
「解剖展」では、これまでに蓄積されてきた解剖の成果に加えて、新たに「meiji」の5つの製品に着目した展示を見ることができます。
実際行ってみて、もはや当たり前になっている商品のパッケージや内容物が実は「緻密な設計」がなされているということを実感できる素晴らしい展覧会でしたので、感想をレポートしたいと思います!
- sponsored link -
本展覧会のコンセプト
公式サイトによれば、
私たちは日々、数え切れないほど多くの製品に囲まれて生活しています。大量に生産された品はあたり前の存在として暮らしに溶け込んでいますが、実は素材や味覚、パッケージなど、製品が手に届くまでのあらゆる段階で多様な工夫が凝らされています。それらをつぶさに読み解いていくのが「デザインの解剖」です。
「デザインの解剖」は、グラフィックデザイナーの佐藤 卓が2001年より取り組んでいるプロジェクトで、身近な製品を「デザインの視点」で解剖し、各製品の成り立ちを徹底して検証する試みです。本来の「解剖」が生物体を解きひらき、構造や各部門の関係、さらには条理を細かに分析していく行為であるように、ここではデザインを解剖の手段として、とりあげる製品のロゴやパッケージのレイアウトや印刷などのグラフィックを解析し、製品の内側の仕組みまで細かな分解や観察を重ねます。
これまでに「ロッテ キシリトールガム」、「富士フイルム 写ルンです」、「タカラ(現:タカラトミー) リカちゃん」、「明治乳業(現:明治) 明治おいしい牛乳」、「ISSEY MIYAKE A-POC BAGUETTE」などの製品が解剖され、それぞれ一般的に紹介されることのなかった部分が引き出されてきました。原料や製法、製品管理から流通に至る幅広い要素が掘り下げられることで、私たちが知っていると思いながら、知らない多くのことに気づくきっかけをもたらしています。また、佐藤 卓が教鞭をとった武蔵野美術大学 デザイン情報学科では教育プログラムの一環としても、身近な品々の解剖が続けられてきました。
本展では、これまでに蓄積されてきた解剖の成果を紹介するとともに、新たに「株式会社 明治」の5つの製品に着目します。参加作家には、様々な分野で活躍する若手のクリエイターを招き、子どもから大人まで楽しんでいただける展覧会を目指します。本展は、製品を取り巻く世界はもちろん、社会、暮らしとデザインの関係について、さらにはデザインの役割や可能性について、改めて深く考察する機会となることでしょう。
とのこと。
ここまで分解して解説してくれるの!?っていうくらいに徹底して商品をパッケージから丁寧に説明してくれています。
実際の「デザインの解剖展」の様子をレポート!

展覧会は写真撮影自由。フラッシュや動画・音声は不可で、一部体験型展示以外は触ってはいけません。
以下、展覧館の様子を簡単にご紹介します!

展覧会入り口。明治「きのこの山」の解剖図が印象的です。
「デザインの解剖」とは

会場に入ると、「デザインの解剖」の説明が。
- 身近なものを
- デザインの視点で
- 外側から内側に向かって
- 細かく分析することで
- ものを通して世界を見る
- プロジェクトです。
そしてその横には詳細の説明がありました。

デザインの解剖は、「外から内へ」を原則とすること。その分析の順序は、「ネーミング→ロゴ→パッケージ→内容物」とすること。
分析の順序が、実際に我々が商品を手に取るときに認知する順序と全く一緒のため、とても感覚的に理解しやすいです。

分析の方法は、製品そのものを分析する調査と制作者の意図や実際の制作現場の調査という2つの実践方法があるようです。

最初の会場には、「リカちゃん人形」、「MIYAKE A-POC BAGUETTE」、「写ルンです」の分析の一部について、紹介されています。

写ルンですの断面模型。模型の精巧さに感激していると、隣で見ていた7、8歳くらい女の子が「写ルンですって何ー?」とお母さんに聞いていたことに時代を感じました…。

リカちゃんの頭蓋骨の模型。骸骨にしてみると、リカちゃんがいかに目が大きくて、顎が小さいかが実感できます。
メイン会場へ!
導入部分で「デザインの解剖」についてざっくりと概要を理解した後、メイン会場へ。
詳細の分析は実際に足を運んで確認していただくとして、以下は気になった部分のみご紹介します。
明治 きのこの山

「明治きのこの山」はいわずとしれた有名なチョコスナック。

「きのこの山」のライバルといえば「たけのこの里」でしょう。それぞれの一長一短があるから、それぞれの派閥が誕生しているのですね。

他のきのことの形状の比較。しめじの「きのこの山」がちょっと食べてみたい!

チョコレートやクラッカーもちょっとした加減で色が変化することがわかります。
チョコの形さえ決まればあとは製造するだけかと思いきや、実は細かい要素のバランスをとりながら、実際の「きのこの山」を作っていると思うと感慨深いですね。。

きのこの山のパッケージに描かれている風景のジオラマ。

キャラデザインを手がけているひこねのりお氏の世界観がよく出ていますね!!ちなみにカールおじさんなんかもひねこ氏のデザインです。

巨大なきのこの山の断面模型もインパクト抜群!!
明治 ブルガリアヨーグルト

「明治ブルガリアヨーグルト」も定番のヨーグルトですよね。

ロゴタイプはこんなに変化しているんですね!全然気がつきませんでした。時代とともに微調整を繰り返しているんですね。

そういえばヨーグルトの袋についていた砂糖ってなくなってたんですね。これも気づきませんでした。

ヨーグルトの成分についても解説が。ヨーグルトと一言で言っても、香り・舌触り・固さ・滑らかさ・コクなどなど、発酵の仕方や時間によって全く異なるそう。
どういった商品にしていくか、決定が悩ましい作業だと感じます。。
明治 ミルクチョコレート

明治の「板チョコ」。100円で買える手軽さで人気の商品です。

オートマタ作家の原田和明さんの作品「ドット文字印字の仕組み」。ドット印刷の仕組みを解説する機械。とても分かりやすい。何気なく見ていた印刷も解剖・分析されることで、なんだかちょっと見方が変わります。

巨大な板チョコがインパクト抜群。1ピースの大きさや綺麗に割れる溝の凹みなど、チョコ形状の工夫のしどころはたくさんありそうです。

あんまり関係ないですが、カカオ豆の内部ってなんか気持ち悪いですね。。。
明治 エッセルスーパーカップ

「エッセル スーパーカップ」もコスパが高くて、個人的には大好きな商品。

超バニラってなんだよ。ってずっと思っていましたが、こんな理由があったとは。

バニラアイスにとって溶け具合ってかなり重要な要素ですよね。こうした検証もしっかり行われて製品が作られています。
明治 おいしい牛乳

個人的によくお世話になっている「おいしい牛乳」。

牛乳の味も、牛の種類によって違うんですね。全然こういうところに想像を働かせていなかったなあ。

搾乳の仕組みについて。牛は生き物だからとてもデリケート。いかに快適に牛におっぱいを出してもらうかがポイントですよね。

牛乳は料理にもよく使われますね。「白くする/コクを出す/焦げ目をつける/滑らかにする/ツヤを出す/臭みを消す」それぞれの料理における牛乳の役割が分類されたボタンがあります。

ボタンを押すと対応する料理が光ります。これは「白くする」に対応する料理。

グラフィックデザイナーの下浜臨太郎さんの「ロゴタイプの拡張」。実際に手にとって組み合わせて楽しめる作品です。自分だけの牛乳のネーミングがつけられます。
学生による「デザインの解剖」プロジェクト

本展のディレクターである佐藤卓さんが教鞭をとり、武蔵野美術大学にて10年以上続いた授業「デザインの解剖」。佐藤さんが退いた後も後任の教授により継続され、これまで50以上の製品を解剖したそうです。
このセクションでは、当時の学生が取り組んだ当時の成果が展示されています。圧巻!
最後に!!
この展覧会で感じたことの一つ目は、どんなに小さい「決断」も最終的な商品の完成度に大きく影響してくるということ。
世の中には様々なデザインが溢れていますが、一度分解してみると、その商品の制作過程一つ一つにデザイナーの考えがあり、こだわりがあり、事細かにデザイン設計されていることが分かります。
今回の展覧会では、とても簡潔に制作過程がまとめられていましたが、実際に商品が生み出されるまでには、一つ一つの制作過程で、泥臭いスタディの繰り返しや、多くの迷いと決断が積み重って、一つの製品が成立しています。
その作業は途方もないですが、制作者側の努力って普通は消費者である私たちに伝わらない情報ですよね。
この「デザインの解剖展」は、そういった「設計者の目線」で完成されたモノを分析するという視点を与えてくれるという点がとても新鮮です。
設計者側の視点に立って制作過程を追体験するということが実はこれほど楽しくて感慨深いものだとは気づきませんでした。
例えば、おいしい牛乳の飲むときにも、このデザインの解剖を見た後では、制作にあたっての工夫を知っているので、全然商品に対するありがたみが変わってくるような気がします。
二つ目は、デザイン的思考(設計者の視点)は必ずしもモノづくりだけに当てはまるものではなくて、皆さんの普段の生活にも役立つ思考だということ。
なぜなら、普段の生活で何か迷った時に「なぜこの決断をするのか」という理由を考えることは、デザイン(設計)という作業そのものだからです。
今回展示されていた明治の商品は「定番商品」として長く愛されているものばかりでしたが、味はもちろん、コンセプトもパッケージデザインも全てにおいて合理的にデザインされていることが印象的でした。
実際に仕事をしている上で、全ての決断に対して明確な理由が答えられることって実はかなり難しいと思うんですよね。
複数の選択肢があった時にどちらを選ぶかの合理的な判断をするためには多くの経験や知識が必要です。
そこをなあなあにして決断をすると結果としてチグハグなものになってしまいますが、誠意を持って合理的な解答を積み上げていくことで仕事の完成度は上がっていくということ。
そうした誠意ある実践を続けることの重要性について「明治の定番商品」から教えてもらったような気がします。
…というわけで、私たちの生活に馴染み深い製品の知られざる一面に気づき、新たな視点とともに日常に立ち返ることができる「デザインと解剖展」。
みなさんも是非足を運んでみることをオススメします!!
【休館日】火曜日、年末年始(12月27日-1月3日)
【開館時間】10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
【入場料】一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
*15名以上は各料金から200円割引
*障害者手帳をお持ちの方と、その付き添いの方1名は無料
その他各種割引についてはご利用案内をご覧ください
【公式サイト】http://www.2121designsight.jp/program/design_anatomy/