【感想】『アセンブル_共同体の幻想と未来展@GYRE』地域に根ざした建築家集団の実践とは。

やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。

会期終了が間近に迫っておりますが、表参道EYE OF GYREで開催中の「アセンブル_共同体の幻想と未来展」へ行ってきました。

ロンドンを拠点に活動するアセンブル(Assemble)は、アート、デザイン、建築といったジャンルを越えた市民的公共性に根差した社会的活動を行なう建築家集団。

2010年に15人のメンバーによって結成されました。

アセンブルは、リバプールでのプロジェクトが評価され、2015年のターナー賞を受賞しています。

ターナー賞といえば、現代美術を対象としたイギリスの権威ある賞であり、いわゆる現代アーティストの登竜門です。「建築家集団」が受賞するのはもちろん初であるとのこと。

本展では地域コミュニティ主導のプロジェクトを立ち上げていくアセンブルの活動が詳細に紹介されるとともに、その細やかなルールづくりや住民と協働によるワークショップなどの様子が、図面・写真・映像等を用いて表現されています。

今回が日本での初個展ということで、とても興味深く拝見させていただきました。



– sponsored link –

会場の様子

緊張感のある丁寧な会場構成。それもそのはず、会場構成を手掛けたのはRFAの藤村龍至さんです。

パネルがクリップで止められ、壁に打ち付けた虫ピンで吊るされてあります。紙の質感もクラフト感があって臨場感がありますし、模型、写真、図面、映像展示のバランスもとても丁寧で見やすい。

展示は全てリバプールにある「Granby Four Streets」のプロジェクトに関連するものですが、gallery-Aでは、「ケアンズ・ストリート住宅10軒」のプロジェクトが紹介されています。

「Granby Four Streets」は、1900年代の建物が廃屋となって連なる寂れた街路。行政主導の立て直しが頓挫した後を受け、住民主導での地域再生を図る計画です。

同地区は、1981年に500人を超える逮捕者を出した暴動以来、住人たちは街を離れ、空家は放置されたままとなり、次第に街全体がゴーストタウンになっていました。

しかし、住民コミュニティの中で何人かの住民は、自身で植樹したりストリートマーケットをしたりといった動きをしていたそうです。

アセンブルはそうしたコミュニティ活動に着目し、大きなマスタープランを描くのではない、現在残っている建物の改修、コミュニティスペースの導入、新しい雇用の確保、自営業者の支援などを盛り込んだ「小規模な介入」によって、段階的に開発を進めていく手法に取組みました。

その第一陣であるケアンズ・ストリートの10棟のリノベーションでは、伝統的なイギリスのタウンハウスの特徴である、大きな窓と十分な天井高を生かしながら、床が抜けている場所を二層吹き抜けのスペースにしたり、集めた瓦礫をコンクリートと混ぜて暖炉の囲いにしたり、絵付きのタイルやセラミック製の手作りドアハンドルを設置したりと、あらゆる部分で「手作り」して、街の改装を行いました。

この展示でなんといっても目を引くのはポップでかわいいドローイング。

アセンブルの持つハンドメイドへのこだわりが展覧会での作品展示にも生きているようです。

gallery-Cでは、gallery-Aで紹介されていた「Granby Four Streets」のスキームの第二段階である公共施設「ウィンター・ガーデン」の様子が展示されています。

レンガ造りの外壁だけが残る二階建ての廃屋二戸を、草木が生い茂るインドアガーデンとアーティスト・イン・レジデンスを併設する集会場にリノベーションするプロジェクトです。

gallery-Bでは、「グランビー・ワークショップ」というアセンブルが設立した工房が紹介されています。

この工房は、クラフトに興味のある地元の住民を雇い、作り方の手ほどきを与え、完成した商品をネット販売する施設です。その収益は、グランビーの地域再生活動に還元するシステムを構築しています。

このワークショップは、偶然と即興を招くプロセス、社会的で楽しく協働作業を重視、プロセス主導といった言葉で解説がなされていましたが、現場の最前線で仕事を続ける彼らの哲学が現れているプロジェクトです。

展覧会の感想

いわゆるスターアーキテクトが設計するような、資本主義と一体化した枠組みの中で作られるきらびやかで豪華な建築とは違い、草の根活動的にあるいはゲリラ的に現場から建築プロジェクトを掘り起こしていくアセンブル。

こうした開発を進めていくと地価が上がってしまって既存住民が住めなくなるという「ジェントリフィケーション」という現象が起こってしまうのですが、当地区では、Community Land Trust(コミュニティランドトラスト)というしくみを利用することで、再開発で地価が上がっても、元からの住人の負担が増えない等の対策も取られているそうです。

プロジェクトを自発的に立ち上げ、社会制度の枠組みを考えながら資金を捻出し、自らのクラフトマンシップを発揮して新たな創作を続ける彼らの活動に、アセンブルの職能の広さを感じます。

「低予算」から「空間芸術」を生み出す才能は、確かにアーティストの所業と言えるのではないかと思います。「Granby Four Streets」のプロジェクトが「ターナー賞」受賞の決め手となったということも頷けます。

建物の改築や企画立案だけでなく、プロダクトのアイデアを地域住民に提供してその売り上げを再生事業にあてさせるといった手法の確立から関わるなど、「地域に根差す建築家」という言葉のお手本のような活動です。

一方でこのような取組は、近年、日本で沸き起こっているような「リノベーションまちづくり」の運動や、若手建築家が模索しているようなプロジェクトに近いようにも感じます。

アーキテクトの職能を広げる11組の日本人若手建築家の活躍!

2016.08.30

グランビーのような切実な状況は、まだ日本にはなかなかないように思いますが、老朽化した住宅が並ぶ地域の再開発計画に抗う住民運動は日本にも多々存在します。

遊休化した建物をどのように更新して、地域の魅力を向上させるか。アセンブルの活動を見ると、まだまだ「まちづくり」が取り組める可能性は大きいのだなと勇気づけられるような展覧会でした。

最後に!!

そんな切迫した状況でのまちづくりであっても、アセンブルの作風は至ってゆるく、抜けがあってポップ。
こうした建築家集団の活動が「アート活動」としてターナー賞に輝くということ自体に時代の流れを感じますし、その意味についてこれからもう少し深堀して行きたいなと思いました。

名称:アセンブル “共同体の幻想と未来”展
会期:2016年12月9日(金)~ 2017年2月12日(日)
開館時間:11:00〜20:00 *2017年1月1日休館
会場:EYE OF GYRE 3F [渋谷区神宮前5-10-1] 入場:無料

- sponsored link -

鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
とてもまとまった展覧会で、15人の建築家集団とは思えない強いベクトルを感じました。

オススメ記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です