やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。
ここ1~2年くらい「ミニマリスト」っていう言葉が流行ってますよね。
ミニマリストの定義やライフスタイルについてはそれぞれの方で違っている感じがするのですが、モノを極力持たないことを至上とする人々のこと。最小限主義者っていうらしいよ。今、こうした考え方が若い世代を中心に共感を呼んでいるんだそうな。
具体的には上記のようなライフスタイルのことを言うそう。まじでなにもないよ!部屋に!
彼らのライフスタイルは第3者のサービスにあらゆることをアウトソーシングしているから成立しているわけで、「物を減らすことでこれまでは味わえなかった豊かさがある!」というミニマリスト達の主張は賛否両論ありますが、「侘び寂び」というような一つの美学や哲学としては理解できます。物の溢れた生活にストレスを感じる人が多いという意見も確かに一理ありますからね。
そして、無駄と思える物をそぎ落としてシェイプアップされた空間は、一つ一つの所有物の存在を浮かび上がらせてくれます。
そう、なにを隠そう、そもそも「ミニマリスト」という言葉自体、元々はアートとか建築の枠組みで語られることが多かったのです。
今回は最近世間で沸き起こっているミニマルなライフスタイルの是非はさておき、建築界の文脈でのミニマリズムについてメモしておこうと思います!
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ミニマリストとは!
まずはwikipedia先生から引用をご紹介。
【ミニマリズム】
美術・建築・音楽などの分野で、形態や色彩を最小限度まで突き詰めようとした一連の態度を最小限主義、ミニマリズム(英: minimalism)という(ミニマリスムとも表記される)。1960年代のアメリカに登場し主流を占めた傾向、またその創作理論であり、最小限(minimal)主義(ism)から誕生し、必要最小限を目指す手法である。装飾的な要素を最小限に切り詰め、シンプルなフォルムを特徴としている。また、ミニマリズムを行う者を「ミニマリスト」と呼ぶ。音楽の分野はミニマル・ミュージック、建築の分野は、ミニマル・アーキテクチュア、美術の分野はミニマル・アートと呼ばれる。
ミニマリズムとは、20世紀に始まり、Appleのような企業や様々なグラフィックデザイナーやビジュアルデザイナーを通じて今も続いているデザイントレンド。
建築の年代的にいえば、「モダニズム」という建築運動が巻き起こった時代とミニマリストの台頭は重なりますね。
そんなミニマリストデザインの思想を端的に表す言葉が以下!
Less is more(少ない方が豊かである) ールートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
Doing more with less(少しで多くのことをすること) ーバックミンスター・フラー
グダグダ言わずにミニマルに解説すると、ミニマルデザインは不必要なものを取り除いて必要不可欠な要素だけを残すということです。
建築界のミニマリスト達
というわけで、ミニマリスト達の作品を紹介したいと思います。(※学術的な文脈や作者の思想から汲み取ってミニマリストを定義しているわけではなく、完成後の建築から見たあくまで個人的私見ですので悪しからず。)
ミース・ファン・デル・ローエ
Ludwig Mies van der Rohe(ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)は、モダニズム建築の先駆者と言われているドイツの建築家。第一次世界大戦後の彼の建築スタイルがミニマリストデザインの基盤を築いたと言えます。
先述したように、“Less is more”という言葉を有名にした人物です。
彼の代表作である「バルセロナパビリオン」。壁・屋根・柱だけで多様な場所が作られています。
ミースの建築デザインの特徴としては以下。
- スチールや板ガラスなどのモダンな素材を使用すること
- 構造骨組みを最低限にすること
- たくさんのオープンスペースを含めること
ミースはシカゴのCrown Hallなど数多くのランドマークビルをデザインしました。
バッグミンスター・フラー
Buckminster Fuller(バックミンスター・フラー)は、ジオデシックドームの建築デザインで有名なアメリカ人デザイナー。「宇宙船地球号」を提唱した方でもあります。
引用元:wikipedia
出来るだけシンプルな球を目指したジオデシックドームはミニマリズムの象徴とも言えます。
ドミニク・ペロー
フランス人建築家のDominique Perrault(ドミニク・ペロー)。
新しい建築物を周囲の景観や歴史的背景を損なわずに溶け込ませることに配慮しており、結果的にミニマルデザインな建築作品が設計されております。見よ、この潔い建築!!
梨花女子大学キャンパス・センター。建物の中心部にズバッと石畳の大通りが通っています。
オリンピック自転車競技場/オリンピック・プール。正円の形状をもつシンボリックな建築物です。
ジョン・ポーソン
イギリス人のミニマリスト建築家として知られるJohn Pawson(ジョン・ポーソン)。
Pawson Houseの内観。超シンプルな空間。余計な造作を表に出さないディテールへのこだわりがこの潔さを生んでいます。収納も結構ありそうなので、無理なく生活出来そうです。
Baron House。シンプルな家型の住宅。農村風景にも映えます!!
安藤忠雄
世界のAndoと呼ばれるコンクリート打放し建築の第一人者である安藤忠雄氏。
代表作である住吉の長屋。正面のデザインはコンクリート打ちっ放しの壁に出入り口の開口部があいてるだけ。初期の安藤建築は、ミニマリズムの極みといった建築デザインです。
ちなみに有名な話で、この建物には中庭があるのですが、屋根がかかっていないので雨が降っている時に向こうの部屋に行く時は、傘をさす必要があるという粋なつくりになっています。
篠原一男
1970年代以降の住宅建築デザインに多大な影響を与えた建築家・篠原一男もミニマルで抽象的な作品を多く設計しています。
「白の家」は篠原一男の初期の代表作のひとつで、平面が1辺10メートル四方の正方形であり、真っ白に仕上げられた壁や天井を持ちます。さらに目地や回り縁などが一切なく単純かつ抽象的な空間としています。
この写真から伝わる緊張感…!
谷口吉生
20世紀を代表する建築家である谷口吉生。美術館の設計を多くになっており、美術館の名手とも呼ばれています。
東京国立博物館法隆寺宝物館。美術館らしく端正で軽やかな非の打ち所のないデザイン。
ミニマリズムの精神が徹底されています。
SANAA
妹島和世と西沢立衛による日本の建築家ユニット。建築界のノーベル賞であるプリツカー賞も受賞しているSANAA。
SANAAの魅力はその突き抜けた透明性。
ルーブルランス。周辺の環境に溶け込むようなシンプルで静かな建築。
岡山大学交流広場。抽象的な表現を追求しており、建築らしい素材感や無骨さは一切排除されています。
SANAAには特に建築の実施設計においてミニマルな思考が通底していると思います。
手塚建築研究所(手塚貴晴+由比夫妻)
いつも話題性のある住宅建築を発表する住宅をメインに設計している建築家である手塚夫妻。
切妻の家。切妻の屋根が浮いたようなデザインになっています。4周に深い軒下空間を取り、内部空間はすべて引き戸で開放できます。
楕円形の幼稚園である「ふじようちえん」。
手塚夫妻が設計する建築はいつもシンプルでわかりやすい形で、そのことが結果的に誰からも愛される爽やかで素敵な空間になっているのだと思います。
長谷川豪建築設計事務所
すがすがしい新鮮さをもった建築をつくり続けている若手建築家の長谷川豪さん。
森のピロティという作品。北軽井沢の森の中に建つ別荘で、居住スペースを6.5mの高さの2階に設け、その下の大きなピロティを森に囲まれたリビングのように使います。
コンセプトをそのまま具現化したような大胆でミニマルな構成でありながら、気持ち良さそうな空間が生まれているところが魅力的です。
最後に!!
以上、建築界のミニマルデザインの空間を集めてみました。
ミニマリストと言っても、基本的な考え方や設計プロセスに大きな違いはありません。建築を作るために雑多な条件をひとつひとつ丁寧に解いていった結果とてもシンプルになったということです。
無駄はないけれども、その裏には膨大なトライアンドエラーが潜んでいる。思考が整理されている人の言葉がとてもシンプルで的を射ているように、ミニマリストは条件の整理が上手な人とも言い換えることができそうです。
こうした建築家たちに学んで、少しでもスッキリと切れ味のある人生をおくりたいものです!