やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。
友人の結婚式に出席するため、来月に京都旅行を計画しており、現在、旅程を構想中です。
せっかくだから、美味しいモノも食べたいし、建築見学もしたいですね。
京都と言えばもちろん神社仏閣や町屋といった古建築がメインですが、最近の京都は現代建築も面白い!!
…というのも、京都は歴史と文化が多く残る古都のまち。当然新しく建てる建物もその歴史や景観を踏まえて設計する必要があります。
また、昨今のリノベーションやコンバージョンといった建築のトレンドもあり、京都の現代建築は既存の建物の改修プロジェクトや増築プロジェクトも多数存在しています。
その土地の歴史や文化と向き合いながら生まれてくる建築はいつだって刺激的です。
そこで、今回は京都にて最近建てられた建築物を中心に、個人的に気になった作品について調べてみました。
これまで私が行ったことある京都の現代建築も含まれていますが、皆様の京都建築旅行のご参考になれば幸いです!
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個人的に気になっている京都の現代建築
伝統あふれる街である京都だけあって、古い建物の改修や保存する計画が非常に多いです。
以下、建物タイプによって分類します。
<ホテル>
1.星のや 京都
リゾート再生というコンセプトのもとに星野リゾートが、約100年前から使われてきた木造の老舗旅館「嵐峡館」を改築したリゾートホテル。
京都嵐山、渡月橋至近の保津川沿岸に立地しており、全室リバービューとなっています。
嵐山の渡月橋の先にある桟橋から、船で宿まで辿り着くというコンセプトもキャッチ―。船に乗った時点で「非日常」が味わえます。
建物は既存木軸をそのまま生かし,古い木部には洗いをかけて再生しています。また既存アルミサッシはすべて木製サッシに取り替えられたそうです。「水の庭」と「奥の庭」という遊び心のある日本庭園や、京唐紙を使った壁紙やインテリアなどにも星のやならではのこだわり。
高額な宿泊費に驚愕ですが、いつか行ってみたい宿です。
竣工:2009年
所在地:京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
公式サイト:http://hoshinoyakyoto.jp/
2.ザ・リッツカールトン京都
マリオット・インターナショナルの日本で4つ目のホテル。
2007年に京都市が施行した新景観条例により高さの制限が設けられた敷地であり、吉村順三設計のホテルフジタ京都(1969年竣工)の跡地に同プログラムの建築を建てるという難しい課題にも取り組んでいる作品です。
南北方向約122mに対して、軒高はわずか15m。地上部に客室数を134室、地下部にはホテルの共用部が配置されています。
建物を取り巻く外縁の欄干や、コンクリートで作られた薄い軒天井、軒先の反りといった細部に渡る仕上げと無駄のない構成。「積層の家」にて建築学会賞を受賞されている日建設計・大谷弘明氏の超一流設計者としてのプライドとこだわりを随所に感じます。こちらの建築も第3回京都建築賞に選ばれています。
ちなみに宿泊するには一泊7万円~。迎賓されるくらいの人間になってから訪問しよう…。
<公共施設・商業施設>
3.KIT HOUSE
京都工芸繊維大学のキャンパス内に建てられた学生会館。1階に食堂、2階に本屋とコンビニエンスストアが入っています。
元々この場所に昔建っていた校舎のイメージを再現するため、切り妻連続屋根形状が採用されました。
周辺の煉瓦タイル張りの建築と連続するように煉瓦壁を採用していながら、煉瓦壁は2階のみに使用し、場所によっては煉瓦を格子状に抜き取り、煉瓦の半透明壁とすることで、学生会館として外部に開いた構成になっています。
4.ロームシアター京都
日本モダニズム建築の巨匠である前川國男設計「京都文化会館」の改修プロジェクト。
多様なニーズに対応する公立文化施設という位置付けで、大規模公演が可能な約2,000席のメインホールをはじめとする多目的ホール、京都初の蔦屋書店、スターバックス コーヒー、カフェ&レストランといった様々な施設を導入されています。
ピロティや中庭、建物配置などの全体構成はそのままとして、水平に伸びる大庇など外装をはじめ細部の意匠は保存修復が施された一方、ホールを含む内部空間の機能が一新されました。
旧京都会館の写真と比較してもらうと分かりやすいのですが、庇が足されたり、ホール形状や外装の雰囲気も大きく変わるなど、以前のデザインよりも過剰とも言える改修が施されています。改修後の方がなんかゴテゴテしてますよね。。。
歴史的価値の保存を目的とした改修というよりは、完全に新しい施設になった印象です。建物の保存って本当に難しいですね。。。
実施設計・施工:大林・藤井・岡野・きんでん・東洋熱工業特定建設工事共同企業体
竣工:2016年1月
所在地:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13
公式サイト:http://rohmtheatrekyoto.jp/
5.新風館SHIN-PUH-KAN
一方で建築の保存と開発の両立に成功しているように見える施設も京都にありました。
「新風館」は三条通近辺にある歴史的な建物の一つであった吉田鉄郎設計の旧京都中央電話局の一部を解体しながら新しい建物を増築してつくられた商業施設です。
改装されるまでは廃墟のような状態にあったものに、全く新しいものを並置することにより、新旧のコントラストを強調したデザインとなっています。
L字の洋館に新館を合わせて中庭を囲うの建物配置とし、建物の内側に回廊を巡らせて店にアプローチするように設計されています。中庭部分にステージが配され、商業空間としての活気・熱気に満ち溢れています。
商業施設として順調な運営が続いていましたが、残念ながらホテルに建て替えられることとなり、2016年に閉館。現在、2019年春の開業を目指して再開発中です。オリジナルの建物だけを残してロジャースらの改修による増築部分が解体されてしまったのが悔やまれます。。
所在地:京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
竣工:2001年1月
公式サイト:http://shinpuhkan.jp/(閉鎖中)
6.COCON KARASUMA
京都の中心部である四条烏丸のビルのリニューアル。「COCON」という名前のとおり、古い建物と現代デザインの融合が試みられています。
昭和13年から烏丸のランドマークであった旧丸紅ビルの外壁に、京唐紙に使われる古典文様の雲をプリントした緑のフィルムをガラスで装飾が貼られています。内部にも同様の白の文様が使われています。
1~2階にインテリアショップである「アクタス」や「アウラ」が入っていて、3階はアートシアターになっています。内部で旧建物の外壁が見られる箇所があり、新旧のいずれの雰囲気も感じられて素敵です。
7.魚棚
新京極の賑やかな通りに立つビルに入っている京料理のお店のファサード改修プロジェクト。
ファサード全体に金属メッシュのカーテンを取り付けており、内外の境界がゆるやかに形成されています。
二層分の高さのカーテンは存在感がありつつも壁面の色とも調和していて、京都らしい落ち着いた外観となっています。
料理も美味しいので、お近くに来た際は是非お立ち寄りあれ。
所在地:京都府京都市中京区六角通新京極東入ル松ヶ枝町452-1
竣工:2007年5月
公式サイト:https://r.gnavi.co.jp/k196100/
8.エルメス祇園店
京都祇園の中心を通る花見小路沿いに位置し、茶屋・住居として使用されていた町家をエルメスの店舗に改修するプロジェクト。
景観保全修景地区に指定されていることから、通りから見える建物外観は元の状態が維持されており、内部は坪庭やミセといった町屋の風情を残しつつ、新たな商業空間が構成されています。
1階の販売エリアには、日本の伝統建築で多く使われている「木組み」の技術を応用した什器が壁面沿いに配置されています。エルメス祇園店は2017年7月末までの期間限定店舗のため、再利用可能な内装デザインとなったそうです。
所在地:京都府京都市東山区祇園町南側570番地8
竣工:2016年11月
公式サイト:http://www.maisonhermes.jp/feature/349857/
<美術館・博物館>
9.京都国立博物館「平成知新館」
京都国立博物館は明治28年、幕末の激動の時代に片山東熊によって建設されたものです。
この本館に加えて、平常展示館が昭和40年に森田慶一氏によって設計されました。谷口氏設計の「平成知新館」はこの平常展示館の二代目です。
本館の西洋建築の様式とは大きく異なる超ミニマルなデザインですが、庇の軒線を本館の高さと揃えたということからも、旧館へのリスペクトが感じられます。
日本的な空間構成を取り入れた直線を基本とする展示空間は、京の町屋をコンセプトに取り入れたもの。前面のガラスも半透明とすることでまるで障子のようです。
開放的で明るいロビー空間と、展示品を守るために一切外部と接していない展示空間との対比が素晴らしく、展示室全体を守る免震構造、庭を眺望できるレストランなど、新機能も満載です。
10.大山崎山荘美術館 「地中の宝石箱」「夢の箱」
大山崎山荘は関西の実業家である加賀正太郎によって建てられた洋館です。
現在は大山崎山荘美術館として一般公開されており、安藤忠雄の設計による新館が併設されています。
新館「地中の宝石箱」は、風情ある旧館部分や周辺環境と調和するように直径13mの円筒の展示空間を埋設したもので、その展示空間にはモネの「睡蓮」が展示されています。
「夢の箱」は、元々存在していた蘭の温室に繋がる通路の先に配置された新スペースでこちらも同様に半分地下に埋設され、屋上は緑化することで、周囲の環境と調和が目指されています。
所在地 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
竣工 1995年(地中の宝石箱)、2012年(夢の箱)
公式サイト:http://www.asahibeer-oyamazaki.com/
11.聴竹居
現代建築ではなく近代建築ですが、もし大山崎に行くのであれば聴竹居にも行ってほしいです。
最近、竹中工務店が取得したとのことで話題になりました。
藤井厚二によって昭和3年に建てられた「聴竹居」は、日本の気候・風土に合った日本人の身体に適した住宅を追い求めた藤井厚二の集大成ともいうべき名作住宅です。
和洋の生活様式の統合とともに日本の気候風土との調和を目指した昭和初期の木造住宅として、2000年にはDOCOMOMO JAPANの日本を代表する「モダニズム建築20選」にも選定されています。
この「聴竹居」のデザインはシンプルかつモダン。この時代に既に敷居は床面と同一のバリアフリー。キッチン流しにはダストシュート。部屋にはそれぞれ目的にあったしつらえとなっており、この時代にあって和洋の思想が見事に折衷されたデザインになっています。
事前申請すれば見学も可能なので、80年前にこれほどモダンな建築があったという事実を知るためにも是非見学してみて下さい。
12.平等院鳳翔館
10円玉に描かれていることでも有名な平等院鳳凰堂の宝物館。
1965年に竣功した宝物館は、長らく扉絵、鳳凰、梵鐘、雲中供養菩薩像などの国宝物を収蔵・公開するという重要な役割をはたしてきましたが、老朽化が進み、2001年に新しく博物館として鳳翔館を開館しました。
展示室は全て地下にあり、地上部分は団らんスペースとミュージアムショップとなっています。
出来るだけ抑えられた建物高、縁側のようなスペース、玉砂利が多用されていることなどにより、ランドスケープと建築が融合され、平等院の景観に配慮した風情あふれる雰囲気を醸し出しています。
<その他施設>
13.JR京都駅
建設当初は賛否両論を巻き起こした新京都駅。個人的には大好きな建築。
こちらはこれまでご紹介したモノとは異なり、過去の文脈や京都的風情とは全く異質の規模・デザインの建築です。
外観はモノリシックな壁がそびえたっているようで若干怖い。内部空間はとにかくカオスかつパワフル。大階段によるV字型のいわゆる「谷の建築」は圧巻の一言。
イベントができるように空中につくられた舞台は、危険だという事で現在使用不可なのだそうです。バブルの期待感を一心に背負ったようなデザインはある意味で新しい遺産として後世に残して欲しいですね。
14.京都木材会館
町家と中層建築が建ち並ぶ街中の角地に建つ木材組合のビルで、最近話題の4階建て木造建築です。
事務所兼共同住宅になっており、1階に店舗とギャラリー、共同住宅のエントランス、2階に事務所、3・4階に共同住宅が配置されています。耐火木造4階建てで1・2階は木造ラーメン構法、3・4階は軸組構法を併用しています。
高層なのに木造で和風。京町屋の風情が高層化したかのような建物で一度中に入ってみたい。
最後に!!
以上、京都に建つ現代建築作品をご紹介しました。
何もない土地にゼロベースで全く新しいデザインを生み出す手法も爽快ですが、色濃い歴史や伝統・文化を引き継ぎながら紡いでいくデザインも緻密で奥深いと思いませんか?
ある時期に突然出来たニュータウンは退屈だし、あまりに古いモノばかりで構成された街は安全性に問題がある。
歴史的価値が十分に保存された上で、新しいデザインによって建物が改修・増築されていけば、街は重層的で豊かなものとなるに違いありません。
歴史的価値を保存する慎重な態度と、異質でクリエイティブなモノを挿入する大胆な態度を組み合わせて都市開発に臨む技術や勇気こそ、これからの建築デザインに求められているものだと思います。
都市の更新には様々な意見が存在し、正解が簡単に見つからない世界ではありますが、保存と開発の渦の中で葛藤を続ける京都こそ、その知見を多く得られる場所であることは間違いないと思います。
皆さんも京都観光の際には、保存と開発の両方の視点から街を見ると面白いかもしれませんよ!!