最近、SANAAの妹島和世さんが電車をデザインしたことが話題になっていますね。
西武鉄道は3月14日、25年ぶりとなる新型特急列車を新造し、2018年度から運行すると発表した。デザインは世界的な建築家の妹島和世氏が手がけ、「風景に溶け込むようなやわらかいデザイン」を目指すという。
引用元:http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1603/14/news127.html
このニュースを見て、これまであんまり電車のデザインについて興味なかったのですが、がぜん興味がわいてきました。
調べてみると意外に面白い電車ってたくさんあるんですね!!建築家が電車を作るというのも不思議な話ですが、意外にも多くの異業種の人達にデザイン依頼の声がかかっているわけです。
工業デザイナーはもちろん、建築家やアーティストが作った電車が面白かったので調べてみました。
早速チェックしてみる!!
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電車を設計したデザイナーたち
妹島和世(建築家)
妹島和世さんは、建築界では言わずと知れた超大御所。西沢立衛と共同で主幹するSANAAとして、建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞しています。
最近、ニュースになったばかりの妹島和世デザインの車両です。デザインコンセプトと、外観・内観デザインを妹島氏が担当しています。
プレス発表によれば、
デザインコンセプト
(1)
都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む特急
これまでの特急デザインのように、シャープさや格好良さより、やさしさややわらかさを表現します。
特急だけが風景の中で目立つのではなく、風景と共にあるような特急を目指します。(2)
みんながくつろげるリビングのような特急
いろいろな人が一緒にいながら思い思いに自由な時間を過ごせる空間を表現します。
ゆったりくつろげるリビングのようでもあり、みんなが集まる公園のようでもある、それぞれが自分の時間を持てる新しいパブリックスペースの提供を目指します。(3)
新しい価値を創造し、ただの移動手段ではなく、目的地となる特急
乗り物の姿・形をデザインするだけではなく、みんなが参加することによって作り出されるような特急の新しい価値を表現します。
特急で過ごすことが目的となるような空間・雰囲気・たたずまいのデザインを目指します。
とのこと。公開されたイメージイラストは未来的な雰囲気ですが、反射する素材を活かして、空の青と大地の緑を車両の中に取り込んでいます。
反射する外装といえば、
引用元:http://www.pas-de-calais-tourisme.com/decouverte-et-culture/les-incontournables/louvre-lens/
2012年12月4日に開館したルーヴル美術館の別館、「ルーブル・ランス」を彷彿とさせますね。「ルーブル・ランス」は、SANAAが設計した美術館です。
車両の内観デザインは公表されていませんが、内装もきっとシンプルで洗練されているのでしょうね。
デザインに当たっては、西武鉄道の若手チームが打ち出した「今までに見たことのない新しい特急車両」という方向性に基づいて、「秩父の山の中や都心の街の中と、いろいろな風景の中を走る特急が、やわらかくその風景と共にあるようになれたら良いなと思いました」と説明しています。
これまでは、むしろ黄色やら赤色やら目立つ色の電車と風景の対比を楽しんでいた雰囲気がありますが、「電車が風景に溶け込む」というコンセプトは斬新ですね。
風景に溶け込みすぎて、鳥とか動物、さらには人間を轢いてしまわないか若干心配です。
岡部憲明(建築家)
岡部氏は大学卒業後フランスに渡り、フランス建築界の大巨匠であるレンゾ・ピアノとともにフランスやイタリアで活躍した建築家です。
関西国際旅客ターミナルビルの設計を担当し、1995年の日本建築学会賞を受賞しています。
「関西国際旅客ターミナルビル」
岡部氏は電車の設計もいくつか担当しています。それが、「箱根ロマンスカー」です。
「小田急ロマンスカー50000形 “VSE”」
「小田急ロマンスカー50000形 “VSE”」です。2004年に設計しております。さすがにラグジュアリーでカッコ良い外観です!
この車両の特徴は、なんと運転席が2階になっており、
そのおかげで先頭車両では、外の景色がパノラマで見ることができます。これはかなり迫力がありますね。
その他にも、2007年には地下鉄乗り入れ特急車両「小田急ロマンスカー60000系”MSE”」、「箱根登山電車3000形」を設計されています。どの車両も洗練されており、圧巻です。
「小田急ロマンスカー60000系”MSE”」
![]()
「箱根登山電車3000形」
隈研吾(建築家)
新国立競技場の設計者にも選定された隈研吾氏も電車の内装デザインを担当しています。
それがこの2016年4月17日から運行予定の西部の旅するレストラン「52席の至福」です。
引用元:http://www.seibu-group.co.jp/railways/seibu52-shifuku/design/
レストランのような空間の4両編成(全52席)。秩父の四季をイメージした外装と埼玉県産の「西川材」などを使った内装のデザインになっています。木のルーバーを用いたデザインが隈さんらしいですね。
山本寛斎(ファッションデザイナー)
引用元:http://www.keisei.co.jp/keisei/tetudou/skyliner/jp/ae_design/index.php#
2010年に開業した成田新高速鉄道区間で、最高速度160km/hでの運転を行うために登場した三代目「スカイライナー」用車両です。
車両デザインはファッションデザイナーである山本寛斎氏が担当し、外観デザインのコンセプトは「風」、内装を「凛」と位置づけてデザインされています。色使いなどからなんとなくファッションデザイナーの心意気を感じます。
蜷川実花(写真家、映画監督)
2016年4月29日に上越新幹線「越後湯沢~新潟間」でデビューする「GENBI SHINKANSEN(現美新幹線)」の外観デザインは、写真家・映画監督の蜷川実花氏が担当しています。
新幹線の車体全体に夏の夜空を彩る長岡の花火をデザインしたそうです。新幹線の外観自体が展示作品みたいですね。
本列車は、E3系6両編成をベースにしており、定員は105名。各車両は、以下のアーティストがそれぞれプロデュースを担当する。
- 11号車:松本尚氏(絵画)
- 12号車:小牟田悠介氏(平面)
- 13号車:古武家賢太郎氏(絵画)/paramodel(パラモデル)氏(絵画・彫刻)
- 14号車:石川直樹氏(写真)
- 15号車:荒神明香氏(立体)
- 16号車:ブライアン・アルフレッド氏(映像)
引用元:http://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/20151006_724341.html
出展アーティストも豪華。これは気になる。。。
水戸岡鋭治(工業デザイナー)
鉄道関係では言わずと知れた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏。この人を語らずして、カッコ良い電車は語れないでしょう。
建築や鉄道などの幅広いデザインを手がけ、特にJR九州の鉄道車両や駅舎デザインでは、国際的な鉄道関連のデザイン賞を受賞しています。
水戸岡氏は、九州新幹線をはじめ、JR九州の代表的な特急列車のデザインのほとんどを手がけているそうです。
クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」
なんといっても、水戸岡デザインの素晴らしさはこだわり抜いた内装ですよね。本当に電車なの?って疑ってしまうくらい洗練されています。
最近は九州以外の鉄道でも車両デザインを担当されています。
富士急行1000形電車「富士登山電車」
![]()
外観は堅実なデザインですが、よく工夫された内装です。
水戸岡氏は他にもたくさんの電車をデザインされています。詳しくはwikipediaにて。
奥山 清行(カーデザイナー)
イタリアのデザイン会社ピニンファリーナにいちデザイナーとして入社し、エンツォフェラーリのデザインに関して「イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした男」として話題となった奥山氏。
カーデザインのほか、鉄道車両、航空機、農業機械、船舶等のデザインも手掛けています。
実は、電車も数多くデザインしてるんです。
「JR山手線E235系」
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/JR%E6%9D%B1%E6%97%A5%E6%9C%ACE235%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A
さらには、2017年春に導入を予定している東武本線の新型特急”500系”のデザインも手掛けています。
「東武鉄道 新型特急車両”500系”」
仮面ライダーっぽい外観をしています。インテリアを穏やかでしゃれていますね。
外観は東京スカイツリーに代表される先進的でシンボリックなデザインとしたほか、内装は江戸の伝統色 「江戸紫」をモチーフとした色を腰掛けに使用し、天井には鬼怒川や隅田川の流れをイメージした造形をあしらうなど、“沿線の魅力をつむぐ”デザインとしたとのことです。
奥山氏は、その他にも新幹線E6系電車、新幹線E7系・W7系電車を始めとして多数の車両をデザインしています。
「新幹線E6系電車」
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9AE6%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A
どの電車もカッコ良いですなあ。奥山氏が手がけたその他の車両についてはwikipediaをご参照です。
最後に!!
こうして新しい車両デザインを通して、鉄道業界全体を見渡してみると、従来の”ただ人を輸送する”という考え方から、”いかに満足のいく時間を過ごしてもらうか”という考え方に重点が移っているように思いました。
そのようなコンセプトにおいて、これまでの実績からはまったく異質のデザイナーが採用されているということは納得だなと思います。
どの電車も、さすがはデザイナーというべき、斬新なデザインです。
美しい外観デザインというのは、見る人に喜びを与えますし、ユーザーを第一として考えられている内装は、ユーザーの旅の質を向上させます。
どの列車にも乗ってみたいですが、特に九州に行った時は、是非とも水戸岡列車に乗ってみたいなと思いました。