崖や急傾斜地を最高の住環境にする建築家の斜面地住宅名作15選!

やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。

家を建てるのは、人生でも最大級の買い物と言います。そんな買い物であれば、納得のいくこだわりのあるモノを購入したいですよね。

建物を建てる場合には、建物の「デザイン」はもちろんのこと、その「立地」についてもかなり個性が出ます。

海沿いがいい人、川沿いがいい人、平地を望む人…

それぞれのメリットもデメリットもあるのですが、その中でもかなり攻めている人が選ぶのが急傾斜地や崖の上の家です。

確かに崖に住宅を建てれば、家からの眺望を遮るものはなく、一面に広がる大パノラマが望めますし、外観もダイナミックでカッコ良いですね。傾斜地は土地代が安いというのもポイントです。

なにより、なんだろう、崖があると出来るだけ先端に立ってみたくなる心理。怖いんだけど、真下の様子を見てみたい的なやつ。

しかし、崖の上に住宅があったら、住宅にたどり着くまでが大変だったり、地震や老朽化で家が落っこちたり、崩れたりしないかな…という恐怖心や災害のリスクが付きまといます。

世界には「…なぜそこに建てた?」というくらい崖っぷちに建つ住宅もあります。

今回は、そんな非日常な経験を日常的に求めるつわもの達が建てた、急斜面地に建つダイナミックな住宅をメモしたいと思います!



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傾斜地に建築しようと思ったときに知っておきたい3要素

作品をご紹介する前に、日本国内の傾斜地に建築物をつくる時の注意点を列記しておきます。

1.「急傾斜地崩壊危険区域」ではないか

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「急傾斜地崩壊危険区域」は崖崩れする危険があると明確に指定された場所の事。

急傾斜地が危険と判断された場合は、国ないしは県が8~9割を負担し、残りを市や住民が負担して崩落対策工事を行います。

安全性のことを考えれば、「急傾斜地崩壊危険区域」での建築は、間違いなく避けるべき!!定期的な検査も入りますし、思わぬタイミングでの出費が発生することもあり得ます。

土砂崩れの恐れがある「土石流危険渓流」に指定されている地域も危険ですので、併せてチェックを。

平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害は記憶に新しいですが、ここも一部「急傾斜地崩壊危険区域」や「土石流危険渓流」に指定されていました。対策工事を次年度に行う予定だった最中にあの崩落事故が発生してしまったそうです。

2.「宅地造成法改正」後の造成か確認すること

平成18年9月に「宅地造成法」が改正されました。

阪神淡路大震災地震の際、急傾斜地のみならず、比較的緩やかな斜面での地滑りが多く確認されました。そのため、ひな壇型の宅地造成に関しては、法で厳しく管理する方向へ転換。

気に入った土地がすでにひな壇型の造成が完了している宅地であったのなら、この「改正宅地造成法の仕様での造成かどうか」を不動産屋に確認しておきましょう。

3.擁壁工事は費用・工事期間を考慮すること

既に宅地用として造成されている土地であれば不要ですが、気に入った土地がただ単に切り開かれただけの安全性の確保のため本格的な造成前の場合は擁壁工事の必要性が出てきます。

平らな土地を作るために、「切土」や「盛土」をした場合、斜面の崩壊を防ぐために、切土部分にも盛土部分にも擁壁の設置が必要です。

擁壁はごく一般的な住宅用地1区画で数十万円から数百万かかると言われます。

費用だけでなく、建築にかかる工期にも影響を及ぼします。

傾斜地に建つ住宅15選!

さて、そういった急傾斜地特有の事情を踏まえた上で、傾斜地に建つ住宅をご紹介します。

傾斜があるというマイナスの条件を克服しながら、いかに斜面地の魅力を引き出しているかという点に着目すると楽しいかもしれません。

<戸建住宅編>

まずは基本。戸建て住宅の例からです。

1.ブルーボックスハウス:宮脇檀

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まずは日本の名作住宅から。宮脇檀設計の東京の住宅地につくられた専用住宅。

急な崖地に建てられており、崖からボックスが飛び出しています。道路と同レベルにはガレージだけがあり、そこから階段を上って建物にアプローチします。

ボックスの一部が切り取られており、地階のリビングの採光や眺望などを確保しています。道路から見ていると立方体に見えるのですが、実際は奥に長い直方体です。

竣工当初はボックスの正面壁がブルー、側面壁はグリーンで、ガレージにもサイケデリックなイラストが描かれていたそうです。

2.八ヶ岳の家:城戸崎建築研究室

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山の斜面から乗り出すように建てられた家の姿が衝撃的な住宅。

この住宅は、八ヶ岳とそれに連なる稜線を一望できる場所に立地しています。

傾斜地に沿って浮遊するように住居を配置し、3方から眺望をダイナミックに臨むパノラマビューが実現しました。まるで展望台のように、リビングはもちろん、どの部屋からもぐるりと景色を堪能することができます。

こういった建物の片方が宙に浮いている形式を「片持ち梁(キャンチレバー)」といいますが、支える構造はシンプルにすることで家の水平ラインが際立ち、上品な佇まいの美しい家となっています。

3.イズハウス:アトリエワン

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敷地は西下がりの元みかん畑で、かなりの急傾斜。前面には伊豆相模湾が広がっており、屋根部分はすべてデッキテラスとなっています。

建物への入口となる2階にキッチン・ダイニング、1階にふたつのアトリエ、その間の敷地に沿うようなかたちで寝室や書斎が段状に配されています。

斜面にべったりと張り付いたような住居と相模湾に伸びていくようなウッドデッキがハイブリットされて多様な建築の体験が出来そうです。

4.bird house:宮本佳明

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インフラ=土木、インフィル=建築という棲み分けそのものに着目した住宅。急斜面に建築を建てようとする場合、一般的に「土木」で擁壁をつくって雛壇状に造成を施し、その後で改めて「建築」を建ち上げるという流れになります。

しかし、30度超の急傾斜に建つこの住宅は、斜面を崩すのではなく引っ掛かりの多いコンクリート基礎を打ち込むことによって、その上に安定的に建築を建てることに成功しています。

斜面の動線を確保するために打設されたジグザグに伸びる斜路とその踊り場部分に作られるコンクリート基礎。その上に建つ住居が結果として分棟形式となっており、急傾斜地にありながら土木的な荒々しさを感じない可愛らしい住居となりました。

5.三宅の家:大野慶雄+中原英隆

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この住宅は、何と地盤が途中で4メートルも下がっている特殊な敷地なのですが、その境界線の擁壁に腰かけているように見えるデザインになっています。

敷地が下がっている部分はボリュームとしてはあるものの中身はなく、天井がすごく高い半屋外のような空間となっています。

境界部分を「特に機能の無い自由な空間」としてオープンに使うと、土地の性格がぐっと引き立ちますね。

6.リヴァ・サン・ヴィターレの住宅:マリオ・ボッタ

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続いては海外の事例から。

イタリアの国境に近いティテーノのルガーノ湖畔に建つ塔状の住宅です。敷地は山道に沿った東下がりの斜面地で、広大な森が広がっています。

この住宅はブリッジにより最上階(4階)にアクセスし、階段により下階へと降りて行きます。4階は、書斎とテラス。テラスからは南に湖、北に豊かな森を望み、全ての階を繋ぐ4層の吹き抜けを見下ろすことができます。

傾斜地であることを吹き抜けを使って空間的な心地よさに変える設計がとても素敵です。

7.トロハウス(Tolo House):アルヴァロ・シザ

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コンクリートの階段の家。ほとんど斜面のように見えますが、地下に内部空間があります。

シザはポルトガル出身の世界的建築家で、直方体や有機的なコンクリートの建築を得意としています。

階段は外にしか無いわけではなく、ちゃんと中にもあるので、雨の日も安心です。

屋外の斜面にはなんとプールまであります。階段住居というシンプルなアイディアでありながら、住宅の要素が無駄のないデザインにきれいにハマっていて居心地の良さそうな空間が作られています。

8.Tula House:Patkau Architects

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こちらは山を背負って海を臨む家です。巨石の上に住宅が浮かんでいるように見えます。

せり出し部分の良さもあるのですが、キャンチレバー部分の建物の裏側など、細かいところまでデザインが美しいです。裏側には水盤もあるようです。贅沢!

基本的には先ほど紹介した「八ヶ岳の家」と同じような構成ですね。

9.Cliff House:modscape

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オーストラリアの「究極の崖っぷち住宅」。崖っぷちというかもはや崖下にあります。

住みたいか住みたくないかと言われれば、間違いなく後者です。

崖には鋼鉄製のピンで固定されている様子。間違いなく絶景ですが、やっぱり恐怖を感じますよね。Modscapeがプレハブ住宅専門のデザイン集団っていうのも若干の恐怖心を煽ります。

入り口は屋上から入って下に降りていくようです。最上階は駐車場ですが、車止めるの怖すぎでしょ。アクセルとブレーキを間違えたらそのまま崖下へ真っ逆さまですね…。

modscapeの他の住宅も、プレハブとは思えないくらいの完成度!この住宅もプロモーション効果としては抜群ですね。

<集合住宅編>

斜面地に建つ集合住宅は無数に存在していて名作もたくさんあります。その中でもかなり特徴的なものだけをピックアップしました。

10.六甲の集合住宅:安藤忠雄

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集合住宅の名作からご紹介。六甲山の60度もの急斜面に建てられた集合住宅です。

世界的な建築家・安藤忠雄の名声を確固たるものとした集合住宅で、それ以前の住吉の長屋などの個人住宅の作品から一気にスケールを上げて集合住宅に立ち向かい、新しい建築の型を作り上げた作品と言われています。

急勾配に沿って全面をテラスとして、ボリュームを段々にセットバックしていき、「階段」というモチーフを印象的に表現した建築です。

これだけの急勾配に集合住宅を建設することは、地中の部分に基礎や土留めなどの多大な施工費が必要であり、経済効率性だけで見れば間違いなくゴーサインの出ないプロジェクトと言えます。

それだけの投資をもってしても賃貸マンションとして価値を持つとクライアントを納得させた建築家の情熱と、それを受け止めたクライアントの決断がどれほど凄いものだったかと想いを馳せずにいられません。

11.桜台コートヴィレジ:内井昭蔵

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神奈川県横浜市青葉区に建つ集合住宅。傾斜地形をうまく利用した住棟の配置がステキ。

設計者の内井昭蔵は集合住宅を戸建て住宅に近づけたいとする願望があったと言います。

西向きの急斜面に対して住戸の軸を45度に振り,ジグザグした平面によりバルコニーや開口部に変化を与え、各戸において採光とプライバシーの確保を両立させています。

その結果、屏風のような壁が建物のロマンチックな外観をつくりだしました。

斜面から迫り出したスラブの裏側には、その土木的な直接性を和らげるかのように、化粧目地による装飾的なパターンが刻まれています。

この住宅が竣工して約45年が経ちますが、ビンテージマンションとしても有名で、同じ地域の建物と比べて、資産価値としては落ちていないそうです。

12.ルネ上星川:AIU建築設計事務所

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ルネ上星川は、相鉄線上星川駅から徒歩3分にある名物マンションです。遠目からの見た目は「白い丘」。

傾斜地にべったり張り付いた集合住宅は結構の数がありますが、ここまで大規模かつ徹底したデザインはなかなか見つかりません。

1~5号棟に分かれた全255戸。19階建が中央に伸びる斜めのエレベーターによって結ばれています。

よく見ると各住戸のデザインは何通りもあり、複雑なデザインをまとめ上げた力作です。

ルネ上星川ができたのは約25年前ですが、現在でもポピュラーなタイプで2,500万円はなかなか下らず、今でも空室照会の問い合わせが絶えないそうです。

ちなみにこうした丘の傾斜をそのまま利用した建築物は、今や緑地保全の観点から横浜市は推奨していないそうです。

バブル真っ盛りの時期、斜面地にコストを度外視した複雑なデザインを完成させた贅沢な建築。この先なかなかお目にかかれない特殊な建築だと感じます。

13.Seto:マウントフジ・アーキテクツ

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とある造船所の社宅。瀬戸内海の地形では、平地に余裕がないために急傾斜地に集合住宅を建てる必要があったそうです。

マウントフジ・アーキテクツは、この条件に対して、

  1. 地域に足りない「まとまったサイズの広場」を作る
  2. そのために建物を崖上に伸ばす
  3. 崖上に伸ばすと崖地が安定しないので先端部はキャンチレバーとする
  4. キャンチとのバランスを取るために山側のボリュームを高層化する

といった解答を示しました。

スケール感、仕上げ、素材、構造、いずれをとっても秀逸。瀬戸内海を望む低層棟の広場は、正に船の甲板にいるような気分になります。

<番外編>

最後に、住宅ではありませんが、急傾斜に建つ面白い建築を紹介。

14.Allmannajuvet Zinc Mine Museum:Peter Zumthor

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ノルウェーにオープンした「Zinc mine museum(亜鉛鉱山博物館)」。

設計者はピーターズントー。採掘作業における労働者の激しい日々の生活からインスピレーションを受けて設計されました。博物館の建物、カフェの建物、トイレと駐車場、通路と階段が鉱山の観光ルートに散りばめられて配置されています。

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急傾斜地を巧みに利用した精度の高い建築によって鉱山全体が美術館のように感じられるインスタレーションです。

15.三仏寺(投げ入れ堂)

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日本にも似たような「崖っぷち建築」があります。三重県鳥取県にある「投入れ堂」です。

行ったことがある方もいらっしゃるのでは?草履をはいて山登りをすること1時間程度。

崖の上に建築されたお堂を見ることが出来ます。結構急傾斜の山を登るので、なかなかたどり着くのが大変なんですよね。。

断崖絶壁に建つ建築。創建は1168年とのことでクレーンも安全ロープも無い時代に「どうやって建てたの?」と感じざるを得ないエクストリーム建築のひとつです。

最後に!!

以上崖っぷちの住宅をご紹介しました。総じて面白い形の建物ばかりでしたね!

なんで斜面の建築が面白いのかというと、

  • 斜面に建つというだけで建築と土木の関係性が出てくる
  • 斜面と建築との接地性をどう取り扱うかといったデザイン上の課題が出てくる

などなど、設計にて考慮すべき要素が増えるからだと思います。

その結果として、斜面に沿うように建物を建てたり、斜面から突き出すように建物を建てたりと、色々な解答のあり方が許容されるところが斜面建築の魅力です。

斜面なんて人の住む所じゃないというマイナスの考えを、デザインの力によって魅力ある場所に変えるというロマンを、皆さんにも感じてもらえたら嬉しいです!


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鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
もちろん冒頭述べたとおり、斜面建築においては、デザイン性だけでなく、安全性の確保は必須の条件です。

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