アーキテクトの職能を広げる11組の日本人若手建築家の活躍!

やあやあ、能ある鷹h氏(@noaru_takahshi)だよ。

みなさんは「建築家」というとどのような人を思い浮かべるでしょうか。

あまり建築のことに詳しくないという方でも、きっと隈研吾さんや、安藤忠雄さんザハ・ハディッドさんのような大規模建築をデザインしているスター建築家の方々を思い浮かべるのではないでしょうか。

建築を学ぶ多くの学生も一緒です。

私もスター建築家になりたい!」という想いを持って大学の建築学科に入学し、大学卒業後はスター建築家たちの事務所で修業をし、その後独立して自らの事務所を持ち、コンペに勝利していきながら徐々に大きな建築をつくり、建築家としての名を上げていく、という道が建築学生にとって一つの王道でした。

建築家はコンペを戦う中で、建築の形態やデザインの斬新さで勝負し、常に新しい表現、新しい設計手法を考えてきました。施主を驚かせるような建物を設計し、潤沢な資金を投じて一つの”作品”をつくる。

出来上がった建物が“作品”と呼ばれるのは、建築家が設計した建物が芸術品として扱われているからです。

しかし、日本の経済状況の変化から、公共の建築が“ハコモノ”と批判され、民間企業でも予算の関係上挑戦的な提案を求めるコンペを行うことが出来なくなってきた昨今、クライアントから予算と敷地を与えられて自由な建物を設計する従来の建築家像は、もはや若手の建築家にとっては幻想となりかけていると言われています。

そんな中、最近の若手建築家にはこれまでの建築家像とは全く異なるアプローチの仕方で社会と向き合っている人々がいます。

彼らはゼロから全く新しい新築の建物を作るのではなく、既存建物の改修・リノベーションを主戦場にしていたり、ある地域に根付き、地元の人々と地元の材料を使ってセルフビルドの建物を作ったり、新しい人々の関係性を生み出すような建物のあり方を考えたり、建物を作り始める前の段階から施主とともにどんな建築が必要なのかを議論したり、“なぜそこに建物が必要なのか”というところから建築を思考しています。

彼らの活動は、従来の「建築家」の意味を拡張し、ただ単に「空間=ハコを設計する」にとどまらない活動です。

今回はそうした新しいアプローチで設計活動を続ける注目の若手建築家たちを活躍をまとめたいと思います!



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0.新しい建築家の活動とは

それぞれの若手建築家の活動の特徴を、

  1. 既存の社会ストックを活かす
  2. 人々のつながりをデザインする
  3. 設計以外の部分に関与する

の3つに分けてみました。もちろん全てのプロジェクトはこれらの複合で成立していますが、より強いと思われるコンセプトを選んで区分しています。

1.既存社会ストックを活かす

空き家問題が社会問題になっているように日本にはたくさんの余った建物があります。彼らはそうしたものに着目し、再構成しなおすことで新しい場所を生み出そうとしています。

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浜松市を拠点にする彌田徹、辻琢磨、橋本健史の3氏による若手建築家ユニット。

手掛けたプロジェクトに「渥美の床」「海老塚の段差」など。2014年「富塚の天井」にて若手建築家の登竜門である吉岡賞(第30回)を受賞しています。

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渥美の床』賃貸物件の一室の、床の計画。階高を確保するため天井が解体され、その資材を断面の大きさの異なる木材を短手方向に等幅で裁断した木片を、畳の代わりに床に敷き詰めています。

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富塚の天井』築40年の住宅の改修計画。天井にかかっているのは農園芸資材である遮光防風ネット。照明をその上に均等に配置したり、庭に敷かれていたタイル位置を移動するなどしてそれぞれの部屋とテラスと庭の環境を近づける試みがなされています。

403architecture [dajiba]の独特な設計手法に貫かれているテーマが「マテリアルの流動」です。天井の材が床へ転用され、庭に使用する防風ネットが室内の天井に使用されるなど、モノが移動していく物語を表現しているかのようです。

既成の工業製品を組み合わせて建物を組み立てていくのではなく、その現場や周囲で発生している様々な出来事や、ささいな状況を見つめ直し、他にあり得たかもしれない別の状況を想像して再構築していく。

こうした空間の作り方は「元あったものが別の場所に移る」時に生じる違和感が面白味になっているという点でアート的な手法だと思いますが、近年はアート領域の展覧会などにも出展を続けており、これからの幅広い活躍が期待されます。

増田信吾+大坪克亘

2007年から活動をしている二人の建築家ユニット。空間そのものではなく空間の「境界」を手掛ける異色の若手建築家です。

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躯体の窓』30年前に建てられた古いコンクリートのアパートの改修計画。

この人たちが設計したのはなんと14m×9mの大きな窓だけ。それ以外の建築部分は手をつけていません。彼らは窓の設計だけでこれまで見たことのない斬新な建築を作り上げ、冬場は終日日陰になっていた庭を反射光で明るく快適な環境へと変化させました。

元々存在しているモノの問題点を見つめ直し、一部分を付加することによって相乗効果を生み出すという手法がとても知的です。

彼らはその他のプロジェクトについても塀だけ、基礎だけという建築の部分からアプローチしていく独自の設計手法を取っています。

リノベーションというと構造体だけ残して全て別のものに変えてしまうという風潮の中で、最低限の改修で最大限の効果を生む”ツボ”を探し続ける彼らの活躍がとても楽しみです。

NPO法人モクチン企画/連勇太朗

連勇太郎さんは「Archi-Commons」という建築デザインを「資源化」し、コミュニティに提供するという設計方法論を考案し実践している建築家です。

現在その設計方法論の対象としている建築物は、戦後、人口の増加に合わせて建てられた木造賃貸住宅

老朽化しても建て替え費用がないなどの理由で木賃アパートは空き家となり、放置された空き家は社会問題にもなっています。そんな中、連さんが代表理事を務めるモクチン企画は『モクチンレシピ』という手法によって木造住宅に息を送り込みます。

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モクチンレシピは、ひと言でいうと木賃アパートを改修するための「デザイン」をまとめたアイディア集。このアイディアをレシピとして大家さんや工務店に公開することによって、誰でも共有可能な資源としようという試みをモクチン企画は行っています。

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モクチンレシピ「縁側ベルト」+「ポツ窓ルーバー」の組み合わせ。

1つの部屋をただリノベーションするのではなく、その方法を提供して、みんなで木造賃貸を変えて行くという試みがとても野心的です。モクチン企画が今後どのような展開を見せるのかとても楽しみです!

能作アーキテクツ

能作文徳さん、能作淳平さんの兄弟による建築家ユニット。通常はそれぞれ個人で設計活動されています。

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高岡のゲストハウス』建築家の祖母の家をゲストハウスにするプロジェクトです。

元の家の屋根瓦や障子、家族が使っていた道具などが使われて家族の記憶を継承し、宿泊者にもその記憶を伝えるというコンセプト。

既存の住宅を解体して再構成するといえば簡単ですが、その家の記憶を継承していきながら、新しい空間を生み出すには施工手順の技術的課題が多くあり、さらに新しい素材との調和など考慮すべき点は無数にあります。

まだ未完成ではありますが、その問題を一つ一つ紐解きながら美しいものに仕上げていく二人の姿勢にとても感動します。地方に建築するという行為は一見人口減少時代においては難しいこともあると思いますが、こうした記憶の継承をテーマにしたプロジェクトがこれからも増えてくると良いなと思います。

2.人々のつながりをデザインする

孤独死に代表される社会問題の根元には地域コミュニティに衰退があるといわれていますが、建築の場を共有することで新しい人々のつながりを紡ごうとして活動している建築家たちをご紹介します。

中川エリカ

2014年にオンデザインから独立して建築家の道を歩み始めた中川エリカさんは、斬新な発想と密度の濃い設計で人気の建築家です。

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ヨコハマアパートメント』神奈川県横浜市西区に計画された木造賃貸アパートの計画。 若い人のための、居住と製作の場というコンセプトで設計が進められました。

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この建築の最大の特徴は、1階の半屋外のスペース。〈ヨコハマアパートメント〉の住人や近隣に住む人たちがワークショップやイベントに使えるように設計されています。

集合住宅の中の半分以上のスペースを外部の人たちにも開放して使うという枠組みはかなり大胆ですが、そのスペースが人気を博し有効に活用されていることから多くの人にインパクトを与えました。

大胆な発想と繊細な設計手法でこれからも多くの人にインパクトを与える建築を作ってもらいたい建築家です。

成瀬・猪熊建築設計事務所

シェアハウスやシェアオフィス、コワーキングスペースなどが増加の一途を辿る昨今、建築界の中でもいち早くそれらに注目・発信してきたのが成瀬・猪熊建築設計事務所です。

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LT城西』新築のシェアハウスの計画。近年急速に増加しつつあるシェアハウスは、水回りやリビングを全くの他人である住人同士で共有する住み方のことを指します。

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シェアハウスで境遇も異なる他人が共同生活を送るためには、運営的にも空間的にも、他人同士が自然に場を共用し住みつづけるための工夫が必要となります。成瀬・猪熊建築設計事務所はシェアする空間の設計を重ねながら、流動的な社会に暮らす人々が無理なく新しい関係性を生み出せる空間を作ろうとしています。

バスアーキテクツ/坂東幸輔

建築家の坂東幸輔さんは「創造的過疎」を提唱する地域住民らによるNPO法人グリーンバレーとともに徳島県神山町で空き家や閉鎖された工場をIT企業のサテライトオフィスにリノベーションする「空家町屋プロジェクト」というプロジェクトを2010年から展開しています。

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えんがわオフィス』徳島県の神山町における築80年程の民家をオフィスにコンバージョンする計画。敷地内に点在する母屋・蔵・納屋の三棟を東京に本社を構える企業のサテライトオフィスとして整備しています。

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建物の四周に配されたおおきな「えんがわ」や軒といった日本家屋特有のエレメントを活かして、「町の人たちが気軽に立ち寄れるオフィス」として計画されています。

オフィス内では東京と変わらない業務を行っているのだけれども、その環境は東京とは全く異なる、神山町ならではのオフィスのかたちになっています。

東京から人を呼び、神山町のコミュニティという全く異なるものを建築がつないでいるというあり方がとても新しく、これからこうした試みが各地で増えていくことが一つの場作りの方向性なのかなという風に感じました。

ドットアーキテクツ

ドットアーキテクツは建築設計だけに留まらず、現場施工、アートプロジェクトなど多方面の活動を続ける家成俊勝さん、赤代武志さんによる建築ユニットです。

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Umaki Camp』瀬戸内国際芸術祭2013の作品として作られた、香川県小豆島の馬木地区で老若男女問わず誰もが「建てる」ことに参加できる建築です。

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Umaki Campには、みんなで料理を作ったり映画を制作したり、ラジオ放送をしたりできるスペースが作られ、小豆島に住む人も来島者も自由に使用することができます。

このエリアに暮らす人たちと、ここを訪れた人々をつなぐ仕組みをつくり出す」ことをシンプルに目指された建築であり、国際芸術祭の一環の作品だからこそ東京と地方の人々を結ぶことが期待されています。

3.設計以外の部分に関与する

施主に寄り添って建物の設計を行うだけではなく、積極的に設計以外の部分に関与して自らプロジェクトを作り出していく意欲的な若手建築家もいます。

ツバメアーキテクツ

ツバメアーキテクツは山道拓人 / 千葉元生 / 西川日満里 / 石榑督和らによる建築チーム。

空間の設計をする「Design」と、空間が成立する前の枠組みや完成後の使い方を思考し、研究開発やまちづくりを行う「Lab」の二部門からなる組織から成り立っています。「建築」の枠組みを問い直し、拡張を続けようとさまざまなプロジェクトを世に送り出しています。

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マイパブリック屋台』建築メディアユニットmosakiと開発した、資本主義でも無く、ボランティアでも無い、自分の趣味を通して人々に振る舞うことで場を作る新しい社会貢献「マイパブリック」を実現するための屋台。

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居場所をつくる「まる」と「しかく」SHIBAURA HOUSEに置かれた7つのテーブルがつながることで大きな一つの円になる「まる」いテーブルと、どこへでも持ち運べる「しかく」いキッチン。

ツバメアーキテクツは、ワークショップなども精力的に重ね、場作りを考える際の「未知のニーズ、見えないニーズ」を汲み取っていきます。結果的にできるものは一見奇抜でも目新しいものでもありませんが、その場所、その人に必要とされているモノが真摯にデザインされています。

人や場所に本気で寄り添うことで見えてくる新しい使い方や新しい空間を成立させる枠組みを捉えようとする建築家ユニットです。

一級建築士事務所 秋山立花

2008年に設立してから集合住宅を主に、店舗の内装設計も手掛けている建築事務所。その一方でシングルマザー向けシェアハウス「ペアレンティングホーム高津」の立ち上げに参画する等、設計以外の活動も行う建築家です。

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ペアレンティングホーム』日本で初めてのシングルマザー専用シェアハウスで、全く新しい試みでありながら既に希有な成功例として注目を集めています。

秋山怜史さんは“子育ても仕事も楽しく両立するシェアハウス”というコンセプトのもと、プロジェクトの代表として企画・運営管理を行っています。その姿は建築家というより起業家そのもの。建築家という職能に拘らず社会のために自ら課題を見つけて挑戦していく姿はとてもカッコ良いです。

らいおん建築事務所

らいおん建築事務所は「モノづくり」だけでなく「コトづくり」を行う建築事務所です。「コトづくり」とは既存の建物を活かし、「使い方」や「使う人」を変えて新しい「できごと」を起こすことによって、もっと人々の暮らしを楽しくすることや、まちを元気にすることです。

リノベーションによるまちづくり、働き方や暮らし方のデザイン、イベントの企画、継続的な運営コンサルティングなどさまざまな「コトづくり」を手がけています。

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目白ホワイトマンション memento』老朽化により半数が空室となっていたマンションを賃貸住宅の常識を覆す提案で満室稼動を達成したプロジェクト。

リノベーション前に入居者を見つけること、リノベーション費用をオーナー・入居者・設計者で折半すること、リノベーションはDIYで施工すること等、既存の賃貸事業の仕組みにとらわれない柔軟な提案はこれまでの建築家の職能からは大きく離れた「仕組みづくり」のプロだとも言えます。

建築事務所でありながら「新しく建てない」という選択肢を提供する姿勢は、これからの社会を冷静に見つめていることに他ならず、その柔軟な発想でこれからも多くの常識を打ち破ってほしいと思います。

最後に!!

以上、近年注目されている若手建築家の活動をご紹介しました。

どうでしょうか、ただのハコを作るのではない新しい建築家の動きの一端が見えてきませんか??

新国立競技場や豊洲新市場で日本が混迷を極める中、もはや従来の建築家像は通用しなくなってきているとも言えます。冷静に現実を見つめながら、熱いハートで地に足がついた建築プロジェクトを仕掛けていく若手建築家たち。

そんな“今”を真剣に見つめている人々の活躍をこれからも応援していきたいと思います!


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鷹h氏 (@noaru_takahshi) の戯言

鷹h氏
新しいことを考えるのは労力がいるし、失敗も多いと思いますが、それでも前を向いて活躍している建築家たちのアツい気持ちが少しでも伝わるとよいなと思います。

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